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どうか手を離さないで【イールシ】

※もう息すらできないhttp://fuyuzu.blog.shinobi.jp/Entry/20/と若干続いているような、そんな短編です(笑)
※続きを押すと後書きが出ます\(^o^)/
















苦し紛れに吐き出した、綺麗な言葉はお前には届かない。

胸を痛めて紡ぎ出す言葉など、貴方には似合わない。


「どうして」


どうしてだ。
どうしてこうなった。

イーノック、私はお前にただ殺されたかっただけだった。
わかるだろう、私が堕天することは、すでに神のシナリオのひとつであったようなもの。
それならばせめて、まっすぐ輝くままに澄んだお前の腕の中で、浄化され消滅したかった。

なのに何故、お前は私の手をとるんだ。

「逃げようなんて思うなよ。」

低く痺れるような重低音が私の力を砕く、彼にこんな声が出せたのか…。

「しっかり立てルシフェル。まだ終わりじゃない、終末なんか来させない。」

しっかり捉えられた片手が、力強く引かれる。胸にぶつかるようにして頬を寄せれば、震える身体を逞しい腕が抱き支えた。

「立ち向かおう。」

低い声と裏腹に、仰ぎ見たイーノックの表情は穏やかで晴れやかだった。
よくそんな表情が出来るものだ。もう侵食は始まり、やがて彼の身体にも堕ちた証が刻まれるだろう。

今ならまだ間に合う。
戻るんだイーノック、あの明るく、汚れない場所に戻るんだ。

「帰れ。」

きつく睨み付けたつもりだった。声くらいは震えていたかもしれないが。

「大丈夫だ」
「人の話を聞け…!」
「大丈夫だ、問題ない」

どれだけ抵抗しようとも、彼はそれだけしか口にしようとしなかった。
なにが大丈夫なんだ、教えてくれ。
私は堕天して、君はまだ堕天しないですむ位置にいる。
大丈夫だというならば今しかない、今を逃せばもう二度と天界には戻れず、地獄の災禍に苛まれる結末になるんだぞ。


「頼む、から」


私の話を聞いてくれ。

私の願いを聞いてくれ。

君を失いたくないんだ。


「ルシフェルは変なことを言う。失いたくないなら、この手を離す理由はないだろう」
「違、う…私は、汚れのないままの君が好きなんだ、失いたくなどないんだ」

涙が溢れて来た。ずっと抑えてきた感情の波が一気に押し寄せ、呑まれそうになる。
ただひたすら怖くて、イーノックの手をきつく握り絞めた。
瞬間、僅かに目を細める顔。食い込んだ爪が彼の肌を傷付けてしまったらしい。

血が細く流れ、ほら見ろ、やはり自分は悪魔なのだと、彼を傷付ける存在なのだと思い知る。


「…俺は大丈夫だ。」
「戻るんだイーノック、私を愛していると今も思ってくれるならば」
「貴方を愛してるから俺は大丈夫だ。」

握られた手の力はわずかも緩まない。
血は伝い落ち、彼の白い鎧に弾かれて、ジーパンに飛沫を残していた。

「…イーノック?」

不意に先程彼の肌を傷付けた爪の先を舐められ、ぞくりとする。
そのまま先端を軽く噛まれ、ゆっくり遡るように根本まで口に含まれて。
甘い痺れが指先から舌の根までを犯し、頭がどうにかなりそうだ。

「ぃっ…」

犬歯を宛がわれたと思った瞬間、躊躇なく強く噛まれる。

尖った部分が突き刺さる鋭い痛みが走って、きつく目を閉じた。
イーノックの歯が突き立てられている。先程の仕返しのつもりだろうか。
息は上がり、すでに立っていられない状態で。

「…ん」
「ば、か…っやめろ…」

何かを飲み込む音が聞こえた。

血…。
まさか、私の血を飲んだのか。

「堕天使の血は毒だぞ、わかっているのか!?」
「……中和する方法を知っている。貴方が、…お前が教えてくれたじゃないか。」

ぞくり、悪寒に似た悪寒ではないもの。
真摯で、かつ断定的な瞳に貫かれれば、もう私に紡げる言葉などない。

「ルシフェル、俺は何度も言い続けて来た筈だ。」
「っふ…」

舌を這わせ、軽く血を吸い上げる仕種に、どうしようもなく感じてしまう。

「貴方とならどこまでも堕ちてやる」
「イー…ノック…」

今度は飲み込まず血で濡れた舌で、先程私がつけてしまった、彼自身の傷を舐める。
二人の血が混ざり合う。

夢にまで見た奇跡のような瞬間、もう限界だった。

「ばかだ…お前は…」

涙が止まらない。
彼の羽が真っ黒に染まっても、碧い瞳が赤く染まっても、彼を愛しいと感じてしまう自分が信じられなかった。
馬鹿なのは私だ。

「大丈夫だルシフェル、大丈夫だ。」
「戻るんだ、イーノック…戻れ…」
「もう遅いよ」

優しく笑いながら、目元に何度も唇が触れる。
そのまま激しくなにもかも奪ってくれたらいいのに。

お前しかいらないのに。
お前がいなければいけないのに。

どうして嘘をついたのか。

「堕ちてまで、お前が、私を求めてくれたことが、何よりも嬉しかった。」 

それが真実。 




~~~~~~~~

(´・ω・`)やあ

実はカムリエルの手繋ぎを待受にしていたのは私で、これはそれにインスパイアされてできた作品なんだ。

すごくいきなり書いた短い話だが、カムリエルだけでなく…好きな人がいたら貰ってくれると嬉しい(笑)

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プロフィール

HN:
かさうさぎ
性別:
女性
職業:
貧弱一般人
趣味:
ワクワクすること
自己紹介:
エルシャダイに腐っている腐女子です。
エルシャダイ以前から腐っている腐女子に隙はなかった。
個人的にルシに燃え滾ってますが旦那はイーノック限定で。ナンナは二人の子供で大丈夫(確定)

生きる糧を見出す日々です。頑張ってエルシャダイ!発売日までこの熱を裏切らないで!
ヒロインはルシフェル党に投票しました。

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