イールシ創世記
エルシャダイ隔離部屋(ブログサイト)です(笑)
いきなり好きになっていきなり作られた。
とりあえずイールシわっしょい中だが大丈夫か?
神は言った、このブログはタイトルからして腐っていると。
神のような広い心でなければルシフェルの迸る色気によって目を焼かれるだろうと。
E×L Shaddai 01 【イールシ創世記長編SS】
タイトルが決まったので変更&続き解除(わかりにくいので)しましたw
なんだか壮大な話になってしまう予定(笑)
※公式発表前の四大天使捏造酷過ぎ注意。
※ナワの勝手なイメージ満載注意。
※ルシフェル追放後、イーノックがメタトロンの地位に着いて間もない話という勝手な設定注意。
※ミカエルとガブリエルがイーノック争奪のライバルになってるとか勝手な設定注意。
※ミカエルが生真面目(現在壊れ気味)、ガブリエルが聖母に程近いお姉様タイプ(現在壊れ気味)、ウリエルが唯一の常識人、ラファエルが不憫とか勝手な設定注意。
※とりあえずイールシ前提、ミカ(攻)→イー、ガブ(攻)→イー。ウリエルとラファエルはまだやましくないです(笑)
E×LShaddai
-The End of Enoch and Lucifer.-
【Delusion 01】
最近の事。
ウリエルの頭痛は留まるところを知らなかった。
「メタトロン様、このミカエルが目的地までの送迎と宿泊ホテルの手配とお疲れ後のマッサージを担当いたしまッ!」
「あらあら大変、ミカエルが永遠の幽閉の牢獄に落ちちゃったわ~。」
「仮にも天使長にぃぃ!!」
「メタトロン様、御身を危険に晒す必要はありません。信頼出来る側近は一人で充分。お食事の世話から下の世話まで全てこのガブリエルにお任せ下さいませ。」
「ガブリエル!都合の良い事を言って抜け駆けは許さん!つか今本気で私の事消そうとしたろ!」
「ウリエルちょっと地獄の門の閂抜いてミカエルもついでに投げつけてくれないかしら?」
理由は明白、且つ最悪。
どんな罰を当てようにも追いつかないという程の熾烈な争いが昼夜問わず繰り広げられているからに他ならない。
目の前。身内同士。しかも天使。それも大天使、仮にもも何も本当に天使長であるミカエルと、清楚で百合の花をモチーフにされるほど汚れなき天使とされるガブリエルが。
ちなみに今しがた自分に地獄(冥府)の門のカンヌキを抜いて来いと言ったのはガブリエルその人である。
世界の終末迎える前に色んなもんが終わっとるわ。
「ウリエル、ガブリエル灰にできないか?天使長権限で。」
ため息をつきかけたところでガブリエルに負けそうなミカエルがそっと耳打ちしてきた。
ああこいつもこいつで手遅れだ。そもそも神秘の存在がそんな生々しいセリフを吐いていいのか。
ミカエルは長く美しい金髪を靡かせた逞しい体格の男で、どちらかと言えばメタトロンよりもがっしりと筋肉のついた所謂ガチムチだ。
しかしそんなガチムチに似合わない端正で物静かで美しい面構えが、彼のバランスに波風を立てている。
一回転半ほど悩んで、実はこれ逆にアリなんじゃね?と全てを肯定される、そんな完璧な勝ち犬的イケメンであると言えるだろう。
自分でも訳がわからない。
身体はしなやかな筋肉質で逞しく、しかし顔は色気のある耽美系と言えば…ダメだな余計に訳がわからない。
そう考えると彼の兄の方が余程バランスのとれた耽美系マスターだった。
ファッションで言うところの、ミカエルは筋肉というレイヤーを重ねすぎたブルジョア。重ねているものは一級品だが。
「ミカエルの魂を末梢するにはどうしたらいいかしらね、やっぱり適当に堕天させて浄化するのが得策?」
さて、そうこう考えている内にガブリエルもミカエルに対抗してか一言耳打ち…して来ない。ちょっと離れた場所から小首を傾げ、普通の音量で話しかけて来る。
なんて露骨なんだ。火に油を注ぐとはこのことだが、注ぐまでもなくガブリエル自身が油なのだろうか。
水と油は交わらないとはよく言うが、火で熱せられた油に水を注ぐと地獄の業火になるのは周知の事。つまり炎上させる為に利用するならばこんなに便利なものはない。
わかっていて敢えてやる、それがガブリエルという天使である。
絹のように長く艶やかな美しい髪を流し、清楚で美しい身体付きは聖母マリア様に劣らない程の魅力を持ってして、人々を慈愛の道へと導く。
穏やかで優しい顔立ち、物腰の柔らかで歌に似た清らかな声音は、まさに人格者の理想であり鏡である。
なにもその肩書きが嘘という訳ではない。事実彼女は本当に誰もが見本とすべき人格者であって、優しき愛の権化なのだ。
…今現在この場所を除いては。
「おい聞こえてるぞガブリエル。」
「盗み聞きは天使のすることじゃないですよ。」
「暗殺計画も天使のすることじゃないですよ。」
「お前らどっちも天使じゃないですよ。」
「やはりおかしいと思っておりました、よりによってこの人が天使長だなんて…」
「お前もだお前も!」
「あらうっかり、ウリエルの事かと思っておりましたのに。」
「お前らどっちもって言ってたのに!?」
「どれだけ遠いんだ耳が」
「そうですね、貴方とメタトロン様の距離よりは近いですね。」
「そんなに遠くないわ!いやいやむしろ0距離だろ、今は俺が常時密着サポート役を仰せつかってるんだからな。」
「うわあ…ストーカー通報しますよ。」
「そ、そこまで密着はしてない!流石に風呂とか自室にいられる時はそっと隣の壁から物音を窺っているだけだ。」
「では私の勝ちですね。」
「お前ら何してんだ!!」
「それにしてもミカエル、ウリエル、そして私(不本意)が天使でないとすると、アークエンジェルスがダークエンジェルスになってしまいます、大丈夫ですか?」
「天使じゃないのにエンジェルなのか?」
「エンジェルじゃないならなにになるのですか?」
「そうだな、天使の反対ってなんだっけ?天…は地だから、使うの反対は使わないだから…」
「もう駄目だ…。」
いい加減二人の行動の牽制も疲れて来た。
しかし結論が早い。自分(ウリエル)がいつの間にか天使じゃない事になっているのもどういうことだと声を大にして突っ込んでやりたいが、それ以前に忘れているものがないか。
アークエンジェル(大天使)といえば有名なのがもう一人いるだろうと気付かれた方もいるかもしれない。
正直気を抜くと忘れてしまうほど、なんていうか彼は、その、アレだ…。
「ねえウリエル、もしかして私の存在忘れかけられてない?」
ああ当人が出て来てしまった。
こういう時にしか働かない勘の鋭さ(身の危険の察知ともいう)で、ひょっこり会話に入り込んで来たのは皆さんご存じラファエル。
「あらラファエルおはよう。」
「庭の金木犀お前が植えたんだってな朝から癒されたぞ。ところでどこに行ってたんだ?」
「最初からいましたよ。」
普通に毒気のない二人に頭を撫でられている彼の姿に思わず涙腺が緩みそうになるのもいつもの事だ。
彼のおかげで頭痛も飛んだが、いつもいつも心に引っかき傷を作られる。
頭を撫でられると言っても、別に彼の外見が子供っぽいという訳ではない。
筋肉の付き具合こそミカエルには劣るが、あんなボディビルダー並みのダイヤモンド筋肉は常人レベルを超越しているので大した問題ではないし、別に筋肉がない訳ではない。
表現としては細マッチョくらいのものだろうか、しなやかな筋肉に笑顔を浮かべた好青年の顔が乗っているのであればバランスも文句を言わない。
物腰の柔らかい部分に女性らしさを感じる奴ではあるが、いわば誰とも垣根を作らず親しめる優しい教師みたいな存在に近いのかもしれない。
俺たちよりも遥かに天使という表現が似合う天使だ。うん、たぶん四大天使の中で誰より一番天使だ。
ラファエルの発言に、いささかびっくりしたような表情を見せた二人はとても天使ではない。
知っててやってるだろう、というか面白がってる事は明らか。
「元気出してラファエル、一時は四大天使の地位も危うかった知名度なんて気にすることないわよ。」
「多少私達より存在が薄くて影薄くて癒しの天使なのにガブリエルの方に治癒能力付加されがちなところとかな。だがそこがお前のいいところだ。」
ついでにミルトンの失楽園にも愛想の良い大天使としか書かれてない特徴のない青年のイメージだと俺まで思ってしまってる。
「何これいじめ?四大天使にヒエラルキーあるとか聞いてないよ。」
「はっは、天使だろうが聖人だろうが二次創作においては何でもありだぞラフィ。」
「そうね、血の繋がった実の兄を躊躇なく島流しにしてその地位をまんまと頂いたどこぞの鬼畜外道とか、受胎告知で有名な私とか、破壊天使ウリエルに比べたらただの癒し系美青年になっちゃうのは仕方ないわよラフィ。」
「受胎告知で有名な天使様だけが終末迎える専用のラッパどこ置いた?」
「落ち着け。」
いつからこんな事になったのか。
念のためにフォローしておくが、多少はその傾向があったにせよ、以前の俺らの仲はこんなに極端化していなかった。
というか、そもそもこんなにきついキャラクターを持ってはいなかった。
個性とかアイデンティティとかいうやつだろうか、自由意思により生まれる個体差のようなものだが、それがこんなに際立っていなかったという事である。
俺にだって訳がわからない。
いつから、どうしてこんな風に皆変わってしまったんだ?
確かにミカエルは初めから猪突猛進なところはあったが、基本的に口少なで生真面目な性格の奴だった。何より下ネタやら色恋沙汰を本気で軽蔑しているような潔癖症で、正義感の強い奴だったんだが。
ガブリエルに至ってもそうだ、先で述べた通り彼女は本当に素晴らしい人格者であり、聖母であり清楚で心優しい百合の花に相応しい清純な天使だったのだ。色恋には興味もあったかもしれないが、どちらかと言えば微笑ましく見守っているようなそんな慈愛に満ちた奴で。
いや、ラファエルだけは別段変わった様子もない。そのせいかより影が薄くなったくらいで。
俺自身はどうかと言えば、二人に引きずられるまま保護者として怒りと呆れを持て余す毎日になってしまっている。元々怒りの天使に近いイメージはあったらしいが、こんなに言葉多いのは自分自身でもあり得ない。一日何も話さない事すらあったというのに。
現実逃避にここまで考えてからふと気がつく。
変わったのは何も全員ではない、ミカエルとガブリエルしか変わっていないではないか。
二人の変化があまりに強烈だったから皆の全てに影響が出て来てしまっているが、原因はこの二人だけなのか。
だとすれば激変の理由を知るには、この二人に共通しているものを探れば良い。
粛清は根こそぎ。破壊天使のポリシーだ。
「ちょっと来い」
既に不毛な言い争いに戻った二人のとばっちりで泣かされかけている好青年の肩を叩き、廊下に連れ出す。
見た目はまるで捕食者と小動物のそれだが、あの二人が心底おかしくなってから私達の距離は逆に縮まった。
信頼度が高まったというか、いや断じて同情じゃなくてだな。
去り際に視界の端でチラリした我が天使の王、メタトロン様――元の名をイーノック――は、二人の騒がしいにも程がある流血沙汰の討論の最中で、微動だにせずただ黙々と契約書にサインをし続けていた。
それは、今回のグリゴリ達の浄化という大仕事を成し遂げる前・・・まだ書記長の彼と、共にあった光景と同じであった。
「どうしたんだい」
ようやく一息つける、そんな気持ちで深呼吸をする。
思ったよりも疲労していたらしい神経が、緊張感から解放された事で余計な脱力感を連れてきてくれる。
まだ仕事があるというのに、ここで根を上げていては一日持たない。
「面倒くさいから実直に行くが、ミカエルとガブリエルは何故あそこまでメタトロン様に執着しているんだと思う。」
「そりゃ恋しちゃったからじゃないの?」
事も無げにあっさりと結論付けたラファエルにイラッと来た。
「欲しいのはそんな軽薄で俗物的な匂いのする表面上のものじゃない」
「怖い怖い、わかったからウリエル落ち着いて!」
思わず腰の鞘から剣を抜き、途端に燻り燃え上がるものをラファエルの前に突き出すと、彼は全力で距離をとった。
予想以上に自分のイライラが頂天に達しているのに気がついたのだろう。というよりも、それが取り繕った返答であると彼自身理解していたという事にまた苛つく、不毛だ。
「えーと・・・じゃあ何から話せばいいの?」
「知っている事と、考えられる可能性と、そしてその対処をかいつまんで説明してくれ。」
ラファエルに聞くのには理由がある。
そしてラファエルにしか聞けない理由がある。
「難しい事言うね。」
眉を寄せて、困った表情をしたところで燃える刃が納められる訳ではない。
何者の穢れた知恵にも傷つけられない天使にとって、この剣は特別な存在だ。
自分だけが所有している訳ではないが、「裁く」事を役目として仰せつかっている自分のジャッジは天使とて例外ではない。
天使すら灰に出来る、これはそのような剣。
故にラファエルが心底怯えているのかと言ったらそうでもないのだろうが、間違って斬れたら危ないからしまってと言う彼の言葉に軽く頷いて、ようやく矛先を納めた。
「出始めは間違ってないよ、ミカエルとガブリエルの二人はメタトロン様へ恋慕の念を抱いてしまった。それは仕方のないことだった。」
外と繋がる廊下をゆっくりと歩き、静かな声で語り出す。
静寂の中に広がるラファエルの声は、まるで雨のようだった。
かつて神は、神に最も近しい存在を作った。
それは絶対的で、なにもかもが完璧、そして自由。
どんな恒星よりも光り輝くその羽と姿は、心地良い熱を孕み、目にした者すべてを魅了した。
彼らは対の存在として産まれ色や性質などは意識して違うものに造られた。しかしその、彫刻のように端正な顔立ちは同じものであった。
神は彼ら二人を深く賞賛し、褒め称え、惜しみない愛情を注ぐ。
「お前達は私の最初にして最高の天の子だ、そうだ天使と呼ぼう。」
光を反射し艶やかな影の落ちる黒い髪をした兄が尋ねる。
「貴方が世界の父ですか?」
光を飲み込み燦々と輝く金の髪をした弟が続けて尋ねた。
「ならば我らは世界ですか?」
愛おしく美しい二人の質問を受けた神は穏やかに微笑み、その額に祝福を授ける。
「お前達は世界だ。私の造る理想の世界。“明けの明星”」
黒の髪の子を抱き上げ、神は惜しむ事のない幸福の笑みを称えてみせる。
首筋に唇を寄せると、“ルシフェル”と呼ばれた子の身体はわずかに震え、その足が地を求めて揺れた。
「お前は誰より素晴らしい存在になる。私を愛し、弟を愛し、そして世界を愛しなさい。」
「・・・はい。」
静かに降ろされたルシフェルは安堵の表情を浮かべて己の身体を抱く仕草をする。
その様子を見ても神は怒る事も悲しむ事もなく、微笑みを崩すこともなかった。
「さあミカエル、お前も私を愛してくれるね?」
今だ下を向いているルシフェルを気にする様子もなく、ミカエルと名を与えた金の髪を抱き上げる。
「もちろんです、我が父、我が神、我が主」
ミカエルは太陽の如く明るい笑顔を弾けさせ、ルシフェルとは全く違った反応を返すのだった。
同じように祝福を受けても、心から幸せそうな表情を浮かべ、己から神に擦り寄ってゆく。
ルシフェルがその様子を少しだけ不思議そうな顔をして見つめている事も、当然神は知っていた。
「忘れてはいけないよ、君たちは自由の存在だ。自由に物事を見て、自分の力で己以外のものを愛してみなさい。私は・・・その可能性を信じている。」
その神の言葉に、ミカエルは期待され賛美されている事への充足感を、ルシフェルは言い知れない重みと恐ろしさから不安感を、それぞれ感じ取っていた。もちろんそんなものは表に出てきていいものではない、あくまで無意識下での事。
本人達ですら、一瞬で忘れてしまうような出来事だったのだから。
「可愛いからだと?」
「そう、本当のきっかけは一目惚れ。」
ウリエルの頭痛は今まさにフジヤマヴォルケイノの頂点であった。
「あの生真面目なミカエルがそう言ったのか?」
「あのね生真面目な優等生ほど一回転ぶと大変な事になるんだよ、年齢と重病になる確率は同じだし。」
「ミカエルの年齢っていくつだよ・・・」
「私達より遥かに長いのは確かだね。天地創造の一番最初に造られたんだから。」
「ガブリエルもそう言ってるのか」
「彼女は前々からそういう男児に慈愛が多く向く傾向があったじゃない」
「なんだそれ!」
ルシフェルの話を軽くまとめれば、ミカエルがメタトロン・・・いやイーノックに異常な愛情を持ち始めたのは彼が召し上げられてすぐの辺りだと言うのだ。
気付く訳がない。
「その頃はまだマトモだった。」
「そりゃそうだよ、彼だって常識はわきまえてる。」
曰く、初めは自らの気持ちに疑問を持ち、そして否定しようとしたらしい。
同姓という概念は天使にはないが、流石に天使と元人間では具合が悪いと思うのは生真面目な彼に充分有り得る事だ。
そろそろどこかの部屋に入って話そうと彼が言うので、自分の自室へと場所を移す事にする。
「しかも自分はセラフィム、いわば神の次の地位に値する天使だ。それが召し上げられて間もないイーノックに恋だなんて、当時の彼のプライドは悲鳴を上げていたと思うよ。」
しかしそれほどにイーノックの魅力には隠せぬ何かが溢れていたという訳なのか。
確かにあの男に俺だって惹かれたのは事実だ。だからこそ右も左もわからない彼の手を引いて、積極的に色々なことを教え込んだのであって、ミカエルの気持ちが全てわからない訳ではない。
「問題は、なんで、それが可愛いとかなんとか、そういう気持ちに昇華されるのかって話だよ!」
声を気にする必要はなくなったが、その分音量はそこそこのものになっているだろう。
勝手にお茶を煎れながら耳を塞ぐラファエルに、角砂糖をひとつぶつける。
「だって可愛いって思っちゃったんだからしょうがないじゃないか。」
「ミカエルがイーノック以上のガチムチだからか?確かにミカエルからすりゃ可愛く見えるかもしれないがな。なにそれ真面目に言ってんの?」
「大真面目でしたよ、少なくとも私のところに相談に来た時はね。」
何故ラファエルにしか聞けないことなのかと言うと、彼はいわゆる天使専用のメンタルケアセラピストという役目を担っているからなのだ。
もちろん彼の職務に初めから付属されていた訳ではなく、気がついたらそういうことになっていたというなんともまあ彼らしい流れなのだが。わかりやすく言えば駆け込み寺みたいなもので、心になにか鬱積している天使が彼の元で悩みをぶちまけ、すっきりして帰る・・・そんなところなのである。
しかしながら、それは天使一聞き役の上手なラファエルにしか勤まらない役目である事は確か。
いつしか神も彼の役職に「天使の癒し処」を追加していたというオチで・・・いやそんな話はいい。
中には当然話したくらいで解決出来ないものもある。その一つがミカエルの恋煩いであった。
「ラファエル聞いてくれ、私は頭がどうにかしてしまったらしい。神以外の者を愛するなど・・・いや、愛する者の中で特別な存在を作ってしまうなど・・・ってね。もう最初から頭抱えて死にそうにしてたよ、表には出さないから相談されるまで私も気付かなかったくらいだし。」
「それがなんで今あんな壊れたことになってんだ。」
「それは・・・ねえ、まあ順を追って。ちゃんと理由があると私は思ってる。」
「結論から話せ、今話せ。」
「空気読んでよ。」
「灰にするぞ?」
「ええと・・・それでミカエルは長く長く悩んで来た訳だね、でもある日転機がやってくる。」
「イーノックのグリゴリ浄化か。」
「そう、でもその最中だって彼は理性を保てていたし、想いを曝け出そうなんて気持ちも毛頭なかった。」
「じゃあなんだ、いきなり決壊したってのか?」
確かにイーノックに協力している時の彼は、多少興奮気味であったがどこもおかしくはない。
変化したと感じたのはいつだっただろうか。
「・・・好い加減、見ないふりをするのは止めようよ。なかった事にするにはあまりにも大きすぎる喪失だったじゃないか・・・」
俯いた彼の髪が鎖骨に沿って緩やかに滑り落ち、伏せた長い睫毛が白い肌にほの暗い影を作る。
知らずに息を飲み込んでいた。
「ミカエルにもガブリエルにも越えられない“壁”があったんだ。決して意識的にではなく・・・彼らはそれを排除した。」
目が合った。何を責めるでもない悲しげな瞳が、しかし針のように俺の眼球を貫く。
「堕ちて尚、イーノックを捕らえて離さぬ“明けの明星”を。」
※後書きへつづく。
なんだか壮大な話になってしまう予定(笑)
※公式発表前の四大天使捏造酷過ぎ注意。
※ナワの勝手なイメージ満載注意。
※ルシフェル追放後、イーノックがメタトロンの地位に着いて間もない話という勝手な設定注意。
※ミカエルとガブリエルがイーノック争奪のライバルになってるとか勝手な設定注意。
※ミカエルが生真面目(現在壊れ気味)、ガブリエルが聖母に程近いお姉様タイプ(現在壊れ気味)、ウリエルが唯一の常識人、ラファエルが不憫とか勝手な設定注意。
※とりあえずイールシ前提、ミカ(攻)→イー、ガブ(攻)→イー。ウリエルとラファエルはまだやましくないです(笑)
E×LShaddai
-The End of Enoch and Lucifer.-
【Delusion 01】
最近の事。
ウリエルの頭痛は留まるところを知らなかった。
「メタトロン様、このミカエルが目的地までの送迎と宿泊ホテルの手配とお疲れ後のマッサージを担当いたしまッ!」
「あらあら大変、ミカエルが永遠の幽閉の牢獄に落ちちゃったわ~。」
「仮にも天使長にぃぃ!!」
「メタトロン様、御身を危険に晒す必要はありません。信頼出来る側近は一人で充分。お食事の世話から下の世話まで全てこのガブリエルにお任せ下さいませ。」
「ガブリエル!都合の良い事を言って抜け駆けは許さん!つか今本気で私の事消そうとしたろ!」
「ウリエルちょっと地獄の門の閂抜いてミカエルもついでに投げつけてくれないかしら?」
理由は明白、且つ最悪。
どんな罰を当てようにも追いつかないという程の熾烈な争いが昼夜問わず繰り広げられているからに他ならない。
目の前。身内同士。しかも天使。それも大天使、仮にもも何も本当に天使長であるミカエルと、清楚で百合の花をモチーフにされるほど汚れなき天使とされるガブリエルが。
ちなみに今しがた自分に地獄(冥府)の門のカンヌキを抜いて来いと言ったのはガブリエルその人である。
世界の終末迎える前に色んなもんが終わっとるわ。
「ウリエル、ガブリエル灰にできないか?天使長権限で。」
ため息をつきかけたところでガブリエルに負けそうなミカエルがそっと耳打ちしてきた。
ああこいつもこいつで手遅れだ。そもそも神秘の存在がそんな生々しいセリフを吐いていいのか。
ミカエルは長く美しい金髪を靡かせた逞しい体格の男で、どちらかと言えばメタトロンよりもがっしりと筋肉のついた所謂ガチムチだ。
しかしそんなガチムチに似合わない端正で物静かで美しい面構えが、彼のバランスに波風を立てている。
一回転半ほど悩んで、実はこれ逆にアリなんじゃね?と全てを肯定される、そんな完璧な勝ち犬的イケメンであると言えるだろう。
自分でも訳がわからない。
身体はしなやかな筋肉質で逞しく、しかし顔は色気のある耽美系と言えば…ダメだな余計に訳がわからない。
そう考えると彼の兄の方が余程バランスのとれた耽美系マスターだった。
ファッションで言うところの、ミカエルは筋肉というレイヤーを重ねすぎたブルジョア。重ねているものは一級品だが。
「ミカエルの魂を末梢するにはどうしたらいいかしらね、やっぱり適当に堕天させて浄化するのが得策?」
さて、そうこう考えている内にガブリエルもミカエルに対抗してか一言耳打ち…して来ない。ちょっと離れた場所から小首を傾げ、普通の音量で話しかけて来る。
なんて露骨なんだ。火に油を注ぐとはこのことだが、注ぐまでもなくガブリエル自身が油なのだろうか。
水と油は交わらないとはよく言うが、火で熱せられた油に水を注ぐと地獄の業火になるのは周知の事。つまり炎上させる為に利用するならばこんなに便利なものはない。
わかっていて敢えてやる、それがガブリエルという天使である。
絹のように長く艶やかな美しい髪を流し、清楚で美しい身体付きは聖母マリア様に劣らない程の魅力を持ってして、人々を慈愛の道へと導く。
穏やかで優しい顔立ち、物腰の柔らかで歌に似た清らかな声音は、まさに人格者の理想であり鏡である。
なにもその肩書きが嘘という訳ではない。事実彼女は本当に誰もが見本とすべき人格者であって、優しき愛の権化なのだ。
…今現在この場所を除いては。
「おい聞こえてるぞガブリエル。」
「盗み聞きは天使のすることじゃないですよ。」
「暗殺計画も天使のすることじゃないですよ。」
「お前らどっちも天使じゃないですよ。」
「やはりおかしいと思っておりました、よりによってこの人が天使長だなんて…」
「お前もだお前も!」
「あらうっかり、ウリエルの事かと思っておりましたのに。」
「お前らどっちもって言ってたのに!?」
「どれだけ遠いんだ耳が」
「そうですね、貴方とメタトロン様の距離よりは近いですね。」
「そんなに遠くないわ!いやいやむしろ0距離だろ、今は俺が常時密着サポート役を仰せつかってるんだからな。」
「うわあ…ストーカー通報しますよ。」
「そ、そこまで密着はしてない!流石に風呂とか自室にいられる時はそっと隣の壁から物音を窺っているだけだ。」
「では私の勝ちですね。」
「お前ら何してんだ!!」
「それにしてもミカエル、ウリエル、そして私(不本意)が天使でないとすると、アークエンジェルスがダークエンジェルスになってしまいます、大丈夫ですか?」
「天使じゃないのにエンジェルなのか?」
「エンジェルじゃないならなにになるのですか?」
「そうだな、天使の反対ってなんだっけ?天…は地だから、使うの反対は使わないだから…」
「もう駄目だ…。」
いい加減二人の行動の牽制も疲れて来た。
しかし結論が早い。自分(ウリエル)がいつの間にか天使じゃない事になっているのもどういうことだと声を大にして突っ込んでやりたいが、それ以前に忘れているものがないか。
アークエンジェル(大天使)といえば有名なのがもう一人いるだろうと気付かれた方もいるかもしれない。
正直気を抜くと忘れてしまうほど、なんていうか彼は、その、アレだ…。
「ねえウリエル、もしかして私の存在忘れかけられてない?」
ああ当人が出て来てしまった。
こういう時にしか働かない勘の鋭さ(身の危険の察知ともいう)で、ひょっこり会話に入り込んで来たのは皆さんご存じラファエル。
「あらラファエルおはよう。」
「庭の金木犀お前が植えたんだってな朝から癒されたぞ。ところでどこに行ってたんだ?」
「最初からいましたよ。」
普通に毒気のない二人に頭を撫でられている彼の姿に思わず涙腺が緩みそうになるのもいつもの事だ。
彼のおかげで頭痛も飛んだが、いつもいつも心に引っかき傷を作られる。
頭を撫でられると言っても、別に彼の外見が子供っぽいという訳ではない。
筋肉の付き具合こそミカエルには劣るが、あんなボディビルダー並みのダイヤモンド筋肉は常人レベルを超越しているので大した問題ではないし、別に筋肉がない訳ではない。
表現としては細マッチョくらいのものだろうか、しなやかな筋肉に笑顔を浮かべた好青年の顔が乗っているのであればバランスも文句を言わない。
物腰の柔らかい部分に女性らしさを感じる奴ではあるが、いわば誰とも垣根を作らず親しめる優しい教師みたいな存在に近いのかもしれない。
俺たちよりも遥かに天使という表現が似合う天使だ。うん、たぶん四大天使の中で誰より一番天使だ。
ラファエルの発言に、いささかびっくりしたような表情を見せた二人はとても天使ではない。
知っててやってるだろう、というか面白がってる事は明らか。
「元気出してラファエル、一時は四大天使の地位も危うかった知名度なんて気にすることないわよ。」
「多少私達より存在が薄くて影薄くて癒しの天使なのにガブリエルの方に治癒能力付加されがちなところとかな。だがそこがお前のいいところだ。」
ついでにミルトンの失楽園にも愛想の良い大天使としか書かれてない特徴のない青年のイメージだと俺まで思ってしまってる。
「何これいじめ?四大天使にヒエラルキーあるとか聞いてないよ。」
「はっは、天使だろうが聖人だろうが二次創作においては何でもありだぞラフィ。」
「そうね、血の繋がった実の兄を躊躇なく島流しにしてその地位をまんまと頂いたどこぞの鬼畜外道とか、受胎告知で有名な私とか、破壊天使ウリエルに比べたらただの癒し系美青年になっちゃうのは仕方ないわよラフィ。」
「受胎告知で有名な天使様だけが終末迎える専用のラッパどこ置いた?」
「落ち着け。」
いつからこんな事になったのか。
念のためにフォローしておくが、多少はその傾向があったにせよ、以前の俺らの仲はこんなに極端化していなかった。
というか、そもそもこんなにきついキャラクターを持ってはいなかった。
個性とかアイデンティティとかいうやつだろうか、自由意思により生まれる個体差のようなものだが、それがこんなに際立っていなかったという事である。
俺にだって訳がわからない。
いつから、どうしてこんな風に皆変わってしまったんだ?
確かにミカエルは初めから猪突猛進なところはあったが、基本的に口少なで生真面目な性格の奴だった。何より下ネタやら色恋沙汰を本気で軽蔑しているような潔癖症で、正義感の強い奴だったんだが。
ガブリエルに至ってもそうだ、先で述べた通り彼女は本当に素晴らしい人格者であり、聖母であり清楚で心優しい百合の花に相応しい清純な天使だったのだ。色恋には興味もあったかもしれないが、どちらかと言えば微笑ましく見守っているようなそんな慈愛に満ちた奴で。
いや、ラファエルだけは別段変わった様子もない。そのせいかより影が薄くなったくらいで。
俺自身はどうかと言えば、二人に引きずられるまま保護者として怒りと呆れを持て余す毎日になってしまっている。元々怒りの天使に近いイメージはあったらしいが、こんなに言葉多いのは自分自身でもあり得ない。一日何も話さない事すらあったというのに。
現実逃避にここまで考えてからふと気がつく。
変わったのは何も全員ではない、ミカエルとガブリエルしか変わっていないではないか。
二人の変化があまりに強烈だったから皆の全てに影響が出て来てしまっているが、原因はこの二人だけなのか。
だとすれば激変の理由を知るには、この二人に共通しているものを探れば良い。
粛清は根こそぎ。破壊天使のポリシーだ。
「ちょっと来い」
既に不毛な言い争いに戻った二人のとばっちりで泣かされかけている好青年の肩を叩き、廊下に連れ出す。
見た目はまるで捕食者と小動物のそれだが、あの二人が心底おかしくなってから私達の距離は逆に縮まった。
信頼度が高まったというか、いや断じて同情じゃなくてだな。
去り際に視界の端でチラリした我が天使の王、メタトロン様――元の名をイーノック――は、二人の騒がしいにも程がある流血沙汰の討論の最中で、微動だにせずただ黙々と契約書にサインをし続けていた。
それは、今回のグリゴリ達の浄化という大仕事を成し遂げる前・・・まだ書記長の彼と、共にあった光景と同じであった。
「どうしたんだい」
ようやく一息つける、そんな気持ちで深呼吸をする。
思ったよりも疲労していたらしい神経が、緊張感から解放された事で余計な脱力感を連れてきてくれる。
まだ仕事があるというのに、ここで根を上げていては一日持たない。
「面倒くさいから実直に行くが、ミカエルとガブリエルは何故あそこまでメタトロン様に執着しているんだと思う。」
「そりゃ恋しちゃったからじゃないの?」
事も無げにあっさりと結論付けたラファエルにイラッと来た。
「欲しいのはそんな軽薄で俗物的な匂いのする表面上のものじゃない」
「怖い怖い、わかったからウリエル落ち着いて!」
思わず腰の鞘から剣を抜き、途端に燻り燃え上がるものをラファエルの前に突き出すと、彼は全力で距離をとった。
予想以上に自分のイライラが頂天に達しているのに気がついたのだろう。というよりも、それが取り繕った返答であると彼自身理解していたという事にまた苛つく、不毛だ。
「えーと・・・じゃあ何から話せばいいの?」
「知っている事と、考えられる可能性と、そしてその対処をかいつまんで説明してくれ。」
ラファエルに聞くのには理由がある。
そしてラファエルにしか聞けない理由がある。
「難しい事言うね。」
眉を寄せて、困った表情をしたところで燃える刃が納められる訳ではない。
何者の穢れた知恵にも傷つけられない天使にとって、この剣は特別な存在だ。
自分だけが所有している訳ではないが、「裁く」事を役目として仰せつかっている自分のジャッジは天使とて例外ではない。
天使すら灰に出来る、これはそのような剣。
故にラファエルが心底怯えているのかと言ったらそうでもないのだろうが、間違って斬れたら危ないからしまってと言う彼の言葉に軽く頷いて、ようやく矛先を納めた。
「出始めは間違ってないよ、ミカエルとガブリエルの二人はメタトロン様へ恋慕の念を抱いてしまった。それは仕方のないことだった。」
外と繋がる廊下をゆっくりと歩き、静かな声で語り出す。
静寂の中に広がるラファエルの声は、まるで雨のようだった。
かつて神は、神に最も近しい存在を作った。
それは絶対的で、なにもかもが完璧、そして自由。
どんな恒星よりも光り輝くその羽と姿は、心地良い熱を孕み、目にした者すべてを魅了した。
彼らは対の存在として産まれ色や性質などは意識して違うものに造られた。しかしその、彫刻のように端正な顔立ちは同じものであった。
神は彼ら二人を深く賞賛し、褒め称え、惜しみない愛情を注ぐ。
「お前達は私の最初にして最高の天の子だ、そうだ天使と呼ぼう。」
光を反射し艶やかな影の落ちる黒い髪をした兄が尋ねる。
「貴方が世界の父ですか?」
光を飲み込み燦々と輝く金の髪をした弟が続けて尋ねた。
「ならば我らは世界ですか?」
愛おしく美しい二人の質問を受けた神は穏やかに微笑み、その額に祝福を授ける。
「お前達は世界だ。私の造る理想の世界。“明けの明星”」
黒の髪の子を抱き上げ、神は惜しむ事のない幸福の笑みを称えてみせる。
首筋に唇を寄せると、“ルシフェル”と呼ばれた子の身体はわずかに震え、その足が地を求めて揺れた。
「お前は誰より素晴らしい存在になる。私を愛し、弟を愛し、そして世界を愛しなさい。」
「・・・はい。」
静かに降ろされたルシフェルは安堵の表情を浮かべて己の身体を抱く仕草をする。
その様子を見ても神は怒る事も悲しむ事もなく、微笑みを崩すこともなかった。
「さあミカエル、お前も私を愛してくれるね?」
今だ下を向いているルシフェルを気にする様子もなく、ミカエルと名を与えた金の髪を抱き上げる。
「もちろんです、我が父、我が神、我が主」
ミカエルは太陽の如く明るい笑顔を弾けさせ、ルシフェルとは全く違った反応を返すのだった。
同じように祝福を受けても、心から幸せそうな表情を浮かべ、己から神に擦り寄ってゆく。
ルシフェルがその様子を少しだけ不思議そうな顔をして見つめている事も、当然神は知っていた。
「忘れてはいけないよ、君たちは自由の存在だ。自由に物事を見て、自分の力で己以外のものを愛してみなさい。私は・・・その可能性を信じている。」
その神の言葉に、ミカエルは期待され賛美されている事への充足感を、ルシフェルは言い知れない重みと恐ろしさから不安感を、それぞれ感じ取っていた。もちろんそんなものは表に出てきていいものではない、あくまで無意識下での事。
本人達ですら、一瞬で忘れてしまうような出来事だったのだから。
「可愛いからだと?」
「そう、本当のきっかけは一目惚れ。」
ウリエルの頭痛は今まさにフジヤマヴォルケイノの頂点であった。
「あの生真面目なミカエルがそう言ったのか?」
「あのね生真面目な優等生ほど一回転ぶと大変な事になるんだよ、年齢と重病になる確率は同じだし。」
「ミカエルの年齢っていくつだよ・・・」
「私達より遥かに長いのは確かだね。天地創造の一番最初に造られたんだから。」
「ガブリエルもそう言ってるのか」
「彼女は前々からそういう男児に慈愛が多く向く傾向があったじゃない」
「なんだそれ!」
ルシフェルの話を軽くまとめれば、ミカエルがメタトロン・・・いやイーノックに異常な愛情を持ち始めたのは彼が召し上げられてすぐの辺りだと言うのだ。
気付く訳がない。
「その頃はまだマトモだった。」
「そりゃそうだよ、彼だって常識はわきまえてる。」
曰く、初めは自らの気持ちに疑問を持ち、そして否定しようとしたらしい。
同姓という概念は天使にはないが、流石に天使と元人間では具合が悪いと思うのは生真面目な彼に充分有り得る事だ。
そろそろどこかの部屋に入って話そうと彼が言うので、自分の自室へと場所を移す事にする。
「しかも自分はセラフィム、いわば神の次の地位に値する天使だ。それが召し上げられて間もないイーノックに恋だなんて、当時の彼のプライドは悲鳴を上げていたと思うよ。」
しかしそれほどにイーノックの魅力には隠せぬ何かが溢れていたという訳なのか。
確かにあの男に俺だって惹かれたのは事実だ。だからこそ右も左もわからない彼の手を引いて、積極的に色々なことを教え込んだのであって、ミカエルの気持ちが全てわからない訳ではない。
「問題は、なんで、それが可愛いとかなんとか、そういう気持ちに昇華されるのかって話だよ!」
声を気にする必要はなくなったが、その分音量はそこそこのものになっているだろう。
勝手にお茶を煎れながら耳を塞ぐラファエルに、角砂糖をひとつぶつける。
「だって可愛いって思っちゃったんだからしょうがないじゃないか。」
「ミカエルがイーノック以上のガチムチだからか?確かにミカエルからすりゃ可愛く見えるかもしれないがな。なにそれ真面目に言ってんの?」
「大真面目でしたよ、少なくとも私のところに相談に来た時はね。」
何故ラファエルにしか聞けないことなのかと言うと、彼はいわゆる天使専用のメンタルケアセラピストという役目を担っているからなのだ。
もちろん彼の職務に初めから付属されていた訳ではなく、気がついたらそういうことになっていたというなんともまあ彼らしい流れなのだが。わかりやすく言えば駆け込み寺みたいなもので、心になにか鬱積している天使が彼の元で悩みをぶちまけ、すっきりして帰る・・・そんなところなのである。
しかしながら、それは天使一聞き役の上手なラファエルにしか勤まらない役目である事は確か。
いつしか神も彼の役職に「天使の癒し処」を追加していたというオチで・・・いやそんな話はいい。
中には当然話したくらいで解決出来ないものもある。その一つがミカエルの恋煩いであった。
「ラファエル聞いてくれ、私は頭がどうにかしてしまったらしい。神以外の者を愛するなど・・・いや、愛する者の中で特別な存在を作ってしまうなど・・・ってね。もう最初から頭抱えて死にそうにしてたよ、表には出さないから相談されるまで私も気付かなかったくらいだし。」
「それがなんで今あんな壊れたことになってんだ。」
「それは・・・ねえ、まあ順を追って。ちゃんと理由があると私は思ってる。」
「結論から話せ、今話せ。」
「空気読んでよ。」
「灰にするぞ?」
「ええと・・・それでミカエルは長く長く悩んで来た訳だね、でもある日転機がやってくる。」
「イーノックのグリゴリ浄化か。」
「そう、でもその最中だって彼は理性を保てていたし、想いを曝け出そうなんて気持ちも毛頭なかった。」
「じゃあなんだ、いきなり決壊したってのか?」
確かにイーノックに協力している時の彼は、多少興奮気味であったがどこもおかしくはない。
変化したと感じたのはいつだっただろうか。
「・・・好い加減、見ないふりをするのは止めようよ。なかった事にするにはあまりにも大きすぎる喪失だったじゃないか・・・」
俯いた彼の髪が鎖骨に沿って緩やかに滑り落ち、伏せた長い睫毛が白い肌にほの暗い影を作る。
知らずに息を飲み込んでいた。
「ミカエルにもガブリエルにも越えられない“壁”があったんだ。決して意識的にではなく・・・彼らはそれを排除した。」
目が合った。何を責めるでもない悲しげな瞳が、しかし針のように俺の眼球を貫く。
「堕ちて尚、イーノックを捕らえて離さぬ“明けの明星”を。」
※後書きへつづく。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
(゜д゜)どうしてこうなった・・・。
元は勢いで書いたひっどいもんでしたが一応オチていたというのに、これはいつ終わるのか見当がつかぬ。
イールシとか書いてあるのにイーノックもルシフェルも出てきてないとか。
大丈夫だ、ちゃんと責任はとる(ドヤァ)
続きます。とりあえず第一弾です。
ルシフェルとミカエルが同時に作られたとか萌えます。それも意識的に対にして造ってたら神マジ神って話ですよ。
この時点で神はルシフェルが自分に対して叛逆を起こす可能性があることを見越していたのだと思われます(勝手に)
何故ならそう造ったのは自分だから。
疑いなく懐きまくりの犬と、餌は食べるけど警戒してる猫の両方を飼ってみたくなったのですね神。そんで二人の変化の可能性を高見の見物って訳ですね神。
よくイーノックと神が似ているという設定を見るんですが、私は似てるようで似ていない方向が好きだなと思うのです。
光り輝いてるあたりとかは似てるけど、顔も雰囲気も大分違うのがいい気がします。
神は博愛主義者で底の知れない、喰えない美おっさんが好ましいですねwww
ルシフェルは神にもミカエルにも似て見えたけど、二人とは違うイーノックに心惹かれたりするといいかもしれねえな・・・
なにも考えずに子ルシ出してしまいましたが、初めはちょっと警戒心の強い内気な子だったらかなり萌えます。
ミカは正反対でガキ大将って感じで、ルシは知識を吸収する方にばかり行動が偏っていて、早くも下界に興味を持ったりするといいと思う。
そんでもってこれはカムたんに押し付けるから貰ってくれると嬉しいと思う(笑)
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元は勢いで書いたひっどいもんでしたが一応オチていたというのに、これはいつ終わるのか見当がつかぬ。
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大丈夫だ、ちゃんと責任はとる(ドヤァ)
続きます。とりあえず第一弾です。
ルシフェルとミカエルが同時に作られたとか萌えます。それも意識的に対にして造ってたら神マジ神って話ですよ。
この時点で神はルシフェルが自分に対して叛逆を起こす可能性があることを見越していたのだと思われます(勝手に)
何故ならそう造ったのは自分だから。
疑いなく懐きまくりの犬と、餌は食べるけど警戒してる猫の両方を飼ってみたくなったのですね神。そんで二人の変化の可能性を高見の見物って訳ですね神。
よくイーノックと神が似ているという設定を見るんですが、私は似てるようで似ていない方向が好きだなと思うのです。
光り輝いてるあたりとかは似てるけど、顔も雰囲気も大分違うのがいい気がします。
神は博愛主義者で底の知れない、喰えない美おっさんが好ましいですねwww
ルシフェルは神にもミカエルにも似て見えたけど、二人とは違うイーノックに心惹かれたりするといいかもしれねえな・・・
なにも考えずに子ルシ出してしまいましたが、初めはちょっと警戒心の強い内気な子だったらかなり萌えます。
ミカは正反対でガキ大将って感じで、ルシは知識を吸収する方にばかり行動が偏っていて、早くも下界に興味を持ったりするといいと思う。
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確実に受け取りましたとも!!
何これ…萌えすぎて泣けるんですが;;;;;;
すげぇ面白いよ!!!どんな文才だよ!!!
私にもちょっとでいいから分けていただきたいですよ!ww
ギャグな方だと思っていたら(←超失礼)予想外にシリアスな良い話を
読ませていただけてもう、感無量です…
…ではなくてw
続きがマジで気になります!!!楽しみです!!
イールシも素敵だけど、ナワさんの書く4大天使にも禿げ萌えたvv
個人的にウリエル×ラファエルもアリだと思ってしまったんだが大丈夫か?
この調子でいくとイールシ悲恋なんだが大丈夫か;;;
最初からドキドキが止まらないんだが!!
一番いい結末を頼む(←すごいプレッシャー)
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個人的にウリエル×ラファエルもアリだと思ってしまったんだが大丈夫か?
この調子でいくとイールシ悲恋なんだが大丈夫か;;;
最初からドキドキが止まらないんだが!!
一番いい結末を頼む(←すごいプレッシャー)
- 嘉村英郷
- 2010/10/29(Fri)04:22:36
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かさうさぎ
性別:
女性
職業:
貧弱一般人
趣味:
ワクワクすること
自己紹介:
エルシャダイに腐っている腐女子です。
エルシャダイ以前から腐っている腐女子に隙はなかった。
個人的にルシに燃え滾ってますが旦那はイーノック限定で。ナンナは二人の子供で大丈夫(確定)
生きる糧を見出す日々です。頑張ってエルシャダイ!発売日までこの熱を裏切らないで!
ヒロインはルシフェル党に投票しました。
エルシャダイ以前から腐っている腐女子に隙はなかった。
個人的にルシに燃え滾ってますが旦那はイーノック限定で。ナンナは二人の子供で大丈夫(確定)
生きる糧を見出す日々です。頑張ってエルシャダイ!発売日までこの熱を裏切らないで!
ヒロインはルシフェル党に投票しました。