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突然ですが引っ越しのお知らせです!

かさうさぎです!長いこと放置ばりですんまっせん!!;

この度のサークル参加、並びに嘉村との友情・努力・勝利を折にしまして、方向性と指針がようやく独り立ちを始めましたので(ぐうたらすること苦節23年)…

誠に勝手ながら、リニューアルをさせていただく事になりました!
新しいURLは、

http://tenwatto.blog112.fc2.com/

になります…w
実は引っ越し自体はあっという間だったんですが、まだ整理しきってない(笑)

とりあえず以後の更新はこちらで行いたく思いますので、イールシ創世記改め、甜和兎‐E×LShaddai‐、個人サークル「甜和兎」として活動もしてゆきます。ほぼ初始動ですw
どうぞよろしくお願い致します。

画像を移し替えるのと、登録してあるところにURLの変更を申し出るのと、後…後は作品を…!
頭の中で爆発しそうなこの欲望を吐き出さなきゃならんのですが…!w

とりあえず、今、想像以上に忙しいですw
目先のやることや、嘉村の原稿手伝いが楽しすぎて楽しすぎて、寝不足なのにハイテンションです。
修羅場がこんなに楽しいだなんて…生きてるって素晴らしい!
端からみたら危ない人です。

かさうさぎはパソコンが大好きで、パソコンがないと死ぬのに、情報に偏りがあるという変な種族。
ネットサフとかあんまししないんだなぁ…何故か…(´Д`)
何故だろう…!?
1、きりがなくなって「もうやだ!」となる。
2、なんか落ち込む。
3、たくさんの情報を処理しきれず頭パンクする。
4、「今ある情報でやってみたくなったんだ」とミギーの気持ちがわかる。

…全部?
だからはっきり言います、かさうさぎの畜生は情報にはめっぽう疎い!!

ですけども皆様どうか…こんな鎖国気味のかさうさぎを寛大なお心で許して生暖かく見守ってやってくださいませ…(泣)

また朝に更新します!
今日はとりあえず寝ます!

この場をお借りして、今年の誕生日を祝ってくれた、カムたん、凪沙さん、ちかたん、母、父、祖母、叔母、味塩、MN子に心から感謝を伝えたい。

本当にありがとうございました(*´ω`*)
これからも頑張るよ!


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唐突エルシャダイ!【イールシその他w】

※オリジナルと妄想とフィクションとパロディが混ざり合い、頭がおかしくなって死ぬ可能性があるので気をつけてください(笑)
※ちょっと修正しました。








~今日から主役は!~


アザ「俺の名前はアザゼル。ハードボイルド刑事だ…今日も東京湾に沈む死体と朝日が俺を出迎えてくれる。」
ナン「黙れパンチラw事前阻止できないのは無能の証拠ですねwww」
エゼ「いいから早くズボン掃いて歯磨いて出勤スルノデス、ほらお弁当。」
アザ「俺の名前はアザゼル。妻と一人の娘と二匹のペットを持つ刑事だ…今日も苦手な朝日が目を焼くぜ。なんで出勤は朝からなんだろう夜勤デカになりたい。」
ナン「パンチラ吸血鬼w早くホシの首もいで出世して警視総監になって横領着服で正義の使者から一転、犯罪者になってこいw堕天ネタ回収キタコレw」
エゼ「いい加減にするノデス!ネフィリム君が来ましたよ。」
ナン「やっべw俺もう行くわ!パンチラ早くズボン履かないと真面目に遅刻するぜww」
アザ「なんで男口調なんだwよww」
エゼ「コルァお弁当!つかまた二階からかボケ!」
ナン「ハイテンションナンナ落下参上!」
ネフィ「あ」
エゼ「んもう調子こいて死んだら許さナイノデス!」
ナン「いてえw弁当の角脳天直撃とかマジチート痛えww」
ネフィ「お早う、ナンナ」
ナン「早く行かないと先公に怒られるw1.5倍のスピードで行こうw」
ネフィ「お父さんは?」
ナン「パンチラデカならパンチラ妻と昼メロの真っ最中w」
エゼ「早くイクノデスパンチラ!」
アザ「アッー!」
ネフィ「相変わらず楽しい、ナンナの家」
ナン「笑うなよ、兵が見てるwww」
ネフィ「栄光を君に」
ナン「謀ったなシャアwww」

ナン「俺の名前はナンナ、ごく普通の女子学生だ。この春に晴れて高校に入学した。エルシャ大学付属高等学校、通称エルシャダイ一年二組。」
ネフィ「ナンナ?」
ナン「こいつはネフィリム、最近まで父親の祖国の巨人国に留学していたが帰って来た幼なじみ。この春、晴れて男子高校生として同じ高校に通うことになった。ハーフのようなショタっぽい童顔にさらさらの黒緑髪、巨人国に行っていただけあって背はそこそこ高い。まだ日本語に完璧に慣れていないらしくて若干片言だがそこが可愛いかったりする。いつまでも慣れなければいいのに。」
ネフィ「ナンナ、モノローグ、だだ漏れ。」
ナン「www」

ネフィ「ナンナ、宿題やった?」
ナン「アザゼルが主役だと思ったか?俺だよ!」
ネフィ「ナンナ、聞いてる?」
アザ「悔しいっ…!何故私ではなくあの娘が!」
エゼ「は、や、く、イクノデスボケェ!」




~イーノック君の家庭の事情~


ラファ「ウリエル、早く起きないと遅刻しちゃうよ」
ウリ「…ん」
ラファ「…ウリエルー…(また隈が濃くなってる)」
イー「おはよう母さん」
ラファ「イーノック、おはよう」
イー「父さん今日も早いのか?」
ラファ「そうなんだ、ごめん先にご飯食べててくれる?」
イー「大丈夫だ問題ない。昨日も遅かったもんな。」
ラファ「最近毎日遅いんだよね、もう少し寝かせてあげたいけどさ…」
イー「規律正しいし」
ラファ「それ。たまには遅刻すればいいのに」
イー「大きなヤマに関わってるんだろう?」
ラファ「連続誘拐殺人事件ね、確かに早く解決して欲しい事件ではあるけど僕にとっては心配のタネでしかないよ。」
イー「神様が上司な限りは無茶させないんじゃないか?」
ラファ「神様(警視総監)だって万能じゃないし、それにあの方現場に行かないし…」
イー「暴走する可能性もなきしにあらず」
ラファ「そういう事。大体アザゼルさんとガブリエルが支離滅裂なことをするから」
ウリ「…ラファエル」
ラファ「わわ?」
イー「あ、父さん」
ウリ「おはようイーノック、まだ大丈夫なのか?」
イー「今日はバイクで行くんだが、ルシフェル拾ってくから先に行くよ。」
ラファ「玄関にお弁当置いてあるからね」
イー「ああ、行ってきます」
ウリ「気をつけてな」
ラファ「行ってらっしゃい」

登校してゆくイーノック。

ラファ「…ウリエル、おはよう」
ウリ「おはようラファエル」
ラファ「ん、…疲れてるんだろう、少しくらい遅刻してってもいいんじゃない?」
ウリ「そうしたいのは山々だが、俺が行かないといつまでもミカエル一人で捜査が進まん。」
ラファ「わかってるさ、僕も一応刑事の妻だし…つかアザゼルさんとガブリエルがフリーダム過ぎるんだよね」
ウリ「あいつらの尻拭いをするつもりは全くないが、ま、最後の抑止力くらいにはなってやらんとな。」
ラファ「もう少しくらい休んで行ったら?無理してでも帰ってくるんだもんウリエル」
ウリ「確かに4時間くらいしか寝てないが」
ラファ「身体壊すよ。今日は署に夕飯持ってくから。」
ウリ「その前に朝食を食べて出勤しないとな…」
ラファ「そうだね、パンとご飯どっちがいい?今日のお弁当はイタリア風にしてみたんだよ、疲れた時は一番いいトマトを頼む、……ウリエル…?」
ウリ「ん?」
ラファ「あ、朝ご飯食べるんじゃ」
ウリ「そうだな」
ラファ「…いいのかい?遅刻するよ…」
ウリ「いいんじゃないか?たまにはミカエル一人になりたい時もあるだろう。」
ラファ「ぁ、…ふ…ウリエルぅ…」
ウリ「(イーノックは良い息子に育ったもんだ)」



~ルシフェル君家の…~


ルシ「イーノック、随分早く来たんだな」
イー「ああ、折角の時間を邪魔する訳に行かないからな」
ルシ「?まあいい、まだ準備が出来ていないんだ、少し待っていてもらうが大丈夫か?」
イー「大丈夫だ問題な」
マリ「あらイーノック君!いらっしゃい、どうぞ上がって上がって」
イー「へ、あ、お邪魔します。」
ルシ「…ぇ、う、わああああ!?マリア様…じゃなかったお母さん!まだ私が着替えてるんだが!?」
マリ「いいじゃない減るものじゃないのだし、じっくり見てってイーノック君。」
ルシ「いい訳あるか!見るなイーノック忘れろ忘れろ!」
イー「?大丈夫だルシフェル、その柄もよく似合うと思うぞ?」
イー「違うこれはマリア様が勝手に買ってきただけで、いや今のは洒落じゃないぞ!」
マリ「お母さんでしょルシフェル?」
ルシ「…お母さん…」
イー「ルシフェル泣いてるぞ大丈夫か!?」
マリ「あらお父さんたら忘れ物」
イー「何か忘れて行かれたのですか?」
マリ「ええ、警察手帳とバッチ忘れちゃって」
イー「そんなの忘れて大丈夫か!?」
マリ「お仕置きが必要ねー」
イー「…ルシフェル、マリア様って」
ルシ「いいんだイーノック、行こう。」
マリ「気をつけてね二人共、最近は物騒だから何かあったら通報するのよ。」
イー「ありがとうございます、俺のところも父が警官ですから。」
マリ「ウリエルは特に優秀な警部ですもの。だけど貴方も警部の息子だからって一人で何でも背負っちゃだめよ。」
イー「…はい。」
マリ「いい子ねイーノック。ルシフェルの事よろしくね。」
ルシ「どういう意味ですか」
イー「もちろん!」
ルシ「お前もドヤ顔で言い切るな。意味わかってるのか?」
イー「もちろん。」
ルシ「………」
マリ「愛しい私の息子たち、行ってらっしゃい!」
イー「しっかり捕まってろよルシフェル」
ルシ「………」
イー「ルシフェルー?」
ルシ「……(熱い…!)」



~おや?主役の様子が…~


ナン「あ、バカップル発見w」
ネフィ「本当だバイク、乗ってる」
ナン「おーい!乗せろバカップル!遅刻するw」
イー「ん?」
ルシ「お…っと…なんだ?」
イー「ナンナ?高校生はもうすぐチャイムが鳴る時間じゃ…」
ナン「だから乗せろw」
ルシ「ちょ、私がいるんだぞ痛い痛い!無理矢理乗るな!」
ナン「エロ天使邪魔くせええwww前行け前!」
イー「前?」
ルシ「…前!?」
ナン「早くw」
ネフィ「ナンナ、大丈夫?」
ナン「任せろネフィ!あんたらバカップルだからおkwww」
ルシ「おkな訳あるかアァァ!」
ネフィ「ルシフェル、怒ってる」
ナン「いいから早く前行けよエロ天使。」
ルシ「はい…。」
イー「ルシフェル泣いてるぞ大丈夫か!?」
ルシ「あれ…こんなに私弱かったかな…おかしいな…」
ナン「所詮チート能力のなくなる現代パロは純ステータス頼りになりますからねwざまぁww」
ルシ「くっ…、まあいい。イーノック、一番いい抱っこを頼む(やけくそ)」
イー「任せろ!(ドヤ顔)」
ナン「よし背後ががら空きだw行けネフィ!」
ネフィ「イーノック、よろしく」
イー「しっかり捕まってるんだぞ」
ナン「しかしこれポリスに見付かったら即逮捕ですね。ちなみにナンナは立ち乗りですww」
ネフィ「速い、楽しい」
ルシ「しかし全員警察の身内というのも皮肉な話だな…」
イー「大丈夫だルシフェル、たいした距離じゃないしな。大体お前もノーヘルだろう。」
ルシ「ヘルメットは息苦しいから嫌いなんだ。」
イー「頼むから被ってくれ、心配で仕方ないぞ。(とか言って自分も被ってない)」
ナン「黙れバカップルw大体エロ天使がヘル嫌いなのはイーノックの背中の体温をブハァwww」
ネフィ「ナンナ!?血!!」
イー「うわわ危ない危ない!なんか今投げたのかルシフェル?」
ルシ「…なんでもない。」




~可哀相な真打ち登場~


ミカ「………誰も来ない…!」
アス「ミカっちどったの、ウリエルは?」
ミカ「ウリエルすら来ないんだよ!」
ゼブ「珍しいな、犯罪捜査一課が揃う事の方が珍しいがウリエルすらいないのがとりあえず珍しい。」
ミカ「ベルゼブル…ていうか麻薬取締課にアスモデウスとベルフェゴールが揃ってる現実が純粋におかしい、直視出来ない。なんでだ。」
ゼブ「まあマトモに仕事なんざしねぇがな、ベルフェに至ってはさっきから寝てる。」
ミカ「出勤してくるだけマシじゃないか!遂にウリエルまで遅刻するようになったら私はどうしたらいいんだ。神(警視総監)に合わせる顔がない…」
ゼブ「あー、多分全員所帯持ちだからじゃねえか?」
ミカ「………」
アス「ゼブっち…それ何気に鋭利な刃物だよね。」
ゼブ「真実だろ。アザゼルもウリエルも愛妻家。ただガブリエルはきちんと旦那を送り出す割に自分は遅刻するよな。同じ職場なんだから一緒に来りゃいいのに。」
ベルフェ「リリィは私を送り出した後に家事をするからな…で、弁当を持って出勤してくる。」
ゼブ「起きたのかベルフェ」
ミカ「それ最初から出勤時間守る気ないよねガブリエル!?初めて知ったわそんな事情!」
アス「可哀相なミカっち、よしよし」
ミカ「同情するならあいつらを連れて来てくれ…ついでにいくらしても効かない説教をどうにかしてくれ」
ゼブ「犯罪検挙率が群を抜いてるっつー実績はあんだがなぁ、管理社会には向かない連中なんだろう」
ミカ「お前らに言われる日が来るとは思わなかったぞ。大体あいつらの実績の裏には犯罪スレスレの過剰防衛が付き纏って」
アス「まーまーストレスに効くハーブティー煎れたげよっか、癒しの音楽でもかける?」
ミカ「はぁ…俺も癒しのパートナーが欲しい…」
アス「ちょ、確かにラファエルは癒しだろうけど、アザゼルさんはたまに怪我して出勤してくるよねw」
ゼブ「嬉しそうな顔してな。」
ベルフェ「リリィも癒しだぞ」
アス「部外者にとってはね…つかベルフェゴールにしか見せない顔ありまくりじゃんガブちゃんは。」
ベルフェ「まあ可愛いな。」
ミカ「ああああもうラッパ吹いて殉職しよう」
アス「早まっちゃだめえぇ!ほら、あれ!好きな人とかいないの!?」
ミカ「……」
ゼブ「アスモデウス、それこそ鋭利かつ返し刃のついた凶器だぞ」
ミカ「…私の好きな人は……既に兄(双子)と付き合ってます。」
ゼブ「………」
ベルフェ「……(寝てる)」
アス「……どんまい…」





~果たしてこれは学園ものなのか刑事ものなのか!?~

続き…見たいですか?(笑)

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どうか手を離さないで【イールシ】

※もう息すらできないhttp://fuyuzu.blog.shinobi.jp/Entry/20/と若干続いているような、そんな短編です(笑)
※続きを押すと後書きが出ます\(^o^)/
















苦し紛れに吐き出した、綺麗な言葉はお前には届かない。

胸を痛めて紡ぎ出す言葉など、貴方には似合わない。


「どうして」


どうしてだ。
どうしてこうなった。

イーノック、私はお前にただ殺されたかっただけだった。
わかるだろう、私が堕天することは、すでに神のシナリオのひとつであったようなもの。
それならばせめて、まっすぐ輝くままに澄んだお前の腕の中で、浄化され消滅したかった。

なのに何故、お前は私の手をとるんだ。

「逃げようなんて思うなよ。」

低く痺れるような重低音が私の力を砕く、彼にこんな声が出せたのか…。

「しっかり立てルシフェル。まだ終わりじゃない、終末なんか来させない。」

しっかり捉えられた片手が、力強く引かれる。胸にぶつかるようにして頬を寄せれば、震える身体を逞しい腕が抱き支えた。

「立ち向かおう。」

低い声と裏腹に、仰ぎ見たイーノックの表情は穏やかで晴れやかだった。
よくそんな表情が出来るものだ。もう侵食は始まり、やがて彼の身体にも堕ちた証が刻まれるだろう。

今ならまだ間に合う。
戻るんだイーノック、あの明るく、汚れない場所に戻るんだ。

「帰れ。」

きつく睨み付けたつもりだった。声くらいは震えていたかもしれないが。

「大丈夫だ」
「人の話を聞け…!」
「大丈夫だ、問題ない」

どれだけ抵抗しようとも、彼はそれだけしか口にしようとしなかった。
なにが大丈夫なんだ、教えてくれ。
私は堕天して、君はまだ堕天しないですむ位置にいる。
大丈夫だというならば今しかない、今を逃せばもう二度と天界には戻れず、地獄の災禍に苛まれる結末になるんだぞ。


「頼む、から」


私の話を聞いてくれ。

私の願いを聞いてくれ。

君を失いたくないんだ。


「ルシフェルは変なことを言う。失いたくないなら、この手を離す理由はないだろう」
「違、う…私は、汚れのないままの君が好きなんだ、失いたくなどないんだ」

涙が溢れて来た。ずっと抑えてきた感情の波が一気に押し寄せ、呑まれそうになる。
ただひたすら怖くて、イーノックの手をきつく握り絞めた。
瞬間、僅かに目を細める顔。食い込んだ爪が彼の肌を傷付けてしまったらしい。

血が細く流れ、ほら見ろ、やはり自分は悪魔なのだと、彼を傷付ける存在なのだと思い知る。


「…俺は大丈夫だ。」
「戻るんだイーノック、私を愛していると今も思ってくれるならば」
「貴方を愛してるから俺は大丈夫だ。」

握られた手の力はわずかも緩まない。
血は伝い落ち、彼の白い鎧に弾かれて、ジーパンに飛沫を残していた。

「…イーノック?」

不意に先程彼の肌を傷付けた爪の先を舐められ、ぞくりとする。
そのまま先端を軽く噛まれ、ゆっくり遡るように根本まで口に含まれて。
甘い痺れが指先から舌の根までを犯し、頭がどうにかなりそうだ。

「ぃっ…」

犬歯を宛がわれたと思った瞬間、躊躇なく強く噛まれる。

尖った部分が突き刺さる鋭い痛みが走って、きつく目を閉じた。
イーノックの歯が突き立てられている。先程の仕返しのつもりだろうか。
息は上がり、すでに立っていられない状態で。

「…ん」
「ば、か…っやめろ…」

何かを飲み込む音が聞こえた。

血…。
まさか、私の血を飲んだのか。

「堕天使の血は毒だぞ、わかっているのか!?」
「……中和する方法を知っている。貴方が、…お前が教えてくれたじゃないか。」

ぞくり、悪寒に似た悪寒ではないもの。
真摯で、かつ断定的な瞳に貫かれれば、もう私に紡げる言葉などない。

「ルシフェル、俺は何度も言い続けて来た筈だ。」
「っふ…」

舌を這わせ、軽く血を吸い上げる仕種に、どうしようもなく感じてしまう。

「貴方とならどこまでも堕ちてやる」
「イー…ノック…」

今度は飲み込まず血で濡れた舌で、先程私がつけてしまった、彼自身の傷を舐める。
二人の血が混ざり合う。

夢にまで見た奇跡のような瞬間、もう限界だった。

「ばかだ…お前は…」

涙が止まらない。
彼の羽が真っ黒に染まっても、碧い瞳が赤く染まっても、彼を愛しいと感じてしまう自分が信じられなかった。
馬鹿なのは私だ。

「大丈夫だルシフェル、大丈夫だ。」
「戻るんだ、イーノック…戻れ…」
「もう遅いよ」

優しく笑いながら、目元に何度も唇が触れる。
そのまま激しくなにもかも奪ってくれたらいいのに。

お前しかいらないのに。
お前がいなければいけないのに。

どうして嘘をついたのか。

「堕ちてまで、お前が、私を求めてくれたことが、何よりも嬉しかった。」 

それが真実。 



拍手[11回]

もう息すらできない【イールシ】

※短編です。脈絡はなく、設定などオリジナルとは齟齬が生じ多大なつ妄想により頭がおかしくなって死ぬ可能性があります。
※内容的に成熟した果実の女の子だけでなく、もはや腐っている果実の女の子☆しかお勧めできません。背後に気をつけないで見ても責任がとれませんよ!いいね!忠告したからねかさうさぎは!



















今日も今日とて黙々と机に向かう彼の背中を見ながら、ため息をついた。
いつもの光景ではあるが、朝起きて身支度を整えたと思えば机に直行して書類の束を軽く整理し始めたのだから驚きだ。どれだけ仕事熱心なのかと。
気になった事は考えるより先に手を出さずにはいられない性分なのは充分にわかっている。
人の言葉が聞こえていないのも、目の前の一点に集中しているからだということも充分にわかっている。

だが今は私が側にいるのだ、同じ部屋に。
この大天使長ルシフェルが。







もう息すらできない





 

「真面目だなイーノック」

大抵の天使なら、例え己の仕事が締め切り間近でも手元の原稿が真っ白であっても最高地位の大天使を優先する。
なぜなら私が来ていたと言えば、どんな仕事だって免除され納期の遅れを許され、結果的にマイナスになることなどないからである。
プレッシャーにより磨り減る神経は計算に入れないことにして。

だが、目の前のこの・・・背中しか見えない男にそんな天界での暗黙事項は通用しないらしい。
もともと人間だから当たり前なのかもしれないが、それにしたって放置しすぎやしないだろうか。
確かに下界でグリゴリ狩りをしている時は常時べったりである関係であるが、空気になった覚えはない。そんな夫婦関係は認めない。
あ、いや、別に夫婦じゃないぞ。言葉の文だぞ、わかってるよな?

「イーノック、聞こえているか?」

何度かさりげなく話しかけてはみるものの、なんとまあ全てスルーしてくださる。
これには流石の大天使も心がしょんぼりしそうになった。
いや、しょんぼりなんてしてない。
ええと、退屈すぎるだろう、あまりに。

「イーノック・・・」

いい加減彼の振り向くことのない背中ばかりを眺めていると寂しくなってきた。
いや寂しくなんかない。ただ顔が見えないと色々と不安だろう、ほら、話す時はちゃんと人の目を見て話すようにとマリア様が言っていたし。

「イーノック?」

それにしても、普段からこんなに私を無視するほど周りの見えなくなる奴だったろうか。
わざとやってるとしか思えない無視ぶりに、そろそろ我慢が危険値を脱する。不安になってる訳じゃない、もしなにか理由があるのだとすればそれでいいが、いや不安になってる訳じゃない。
仕方がないので、そっと至近距離に近づいてみることにした。
彼は微動だにしない。
こんなに近くまで来ているのに微動だにしないとはどれだけ私を空気だと・・・

「・・・あれ?」

我ながら間抜けな声を出してしまったと思うが、別に他の誰にも聞かれていないようだしまあいい。
そんなことより、イーノックの様子のおかしさの方が今は問題だった。

「・・・んん・・・」

なんというか・・・これは、寝ている・・・?
それもペンを持ったまま。
更に寝ながら職務を果たそうとしているのか、見たこともない象形文字を作り出している。
きちんと紙面の枠に収まっているのだから職人かっこいいと思っ・・・てない。思ってないぞ私は。
大体眠いなら眠いと一言言ってくれればいいじゃないか。
大体眠いんだルシフェル膝を貸してくれないかと一言言ってくれればやれやれ仕方ない甘えん坊だな君はと膝を貸・・・うわああ本音がさらさらと脳裏に!

・・・なんだ。いいじゃないか、少しくらい夢を見たって。
悪いか?長い時間を有する内のほんの一瞬、この男に心底惚れ込んでしまったなどと恥ずかしくて他言できるような事ではないが、事実なのだからしょうがない。
どうせ堕天する身なんだ、いまさら禁忌とかタブーとか未成年の禁酒くらいどうでもいいじゃないか。
ネタバレすんなとかもうほんとどうでもいい、大体あっちこっち時間移動しすぎてもうどれがどの時点のアレなのかさっぱり検討つかなくなってきたしどうでもよくなってきたキャリーオーバーだよ。人生経験詰め込みすぎた老人がボケる理由がわかった気がする。
ミカエルと一緒に見た映画だからと思って思いっきり話の内容評価したら、実はまだ見てない段階のミカエルだったらしくて本気でキレられたからな。あの時の一撃は痛かった。
マジギレした時のミカエルは本当に強いし怖いしえげつないし容赦ないしサディスティックで適う気がしない。
一応私のほうが性能いい筈なのにおかしいなと思って神に相談したら「アベルとカインを見てたら反省して」といっていた。
どういう意味だ。
カインがアベルを殺そうとしたあの場面のことを言っているのか。

「甘すぎるよ兄さん・・・そんな荒削りの太刀筋で僕を殺せると思ったのかい?」
「た、確かに手ごたえがあった筈なのに!」
「残念だよ、兄さんは人を殺すことで全てを解決できると思ってるちょっと頭冷やそうかな人種にはなる訳がないと思っていたのに。勉強できる奴ほどイカれたときアホになるって都市伝説じゃなかったんだね。」
「くそ、俺は悪くない、この世界が悪いんだ俺をこんなにしたのはこの世界なんだ!!」
「それは正解だ。しかしここをなくして僕らはどこに行くというのか、地を掘り地獄へ行くというのか?再び生えることない肩甲骨の失った羽を必死にはばたかせ崖からダイブするのか。そのどちらかしかこの世界を否定する術はない。もしくは海の底に住むとかね。」
「そうさ、だからこそ俺は革命を起こす。天ががっかりするような罪を犯してやる、人間はお前の思い通りにはならないんだってなぁ!神様の操り人形じゃない、弟も殺せば親も殺すし子も殺す!殺せばなんでも解決できると思ってる短絡思考人間がこの後も永遠に生まれ続けるってことを見せ付けて死んでやるうぅ!」
「・・・兄さんは馬鹿だな」
「ぐはっ・・・!?・・・肘からナイフをはやした・・・・だと・・」
「この罪でさえ、神様のシナリオのひとつ。運命のサイコロのひとつの目にしか過ぎないんだよ・・・」
「アベル・・・だが、これでこの世界のシナリオが変わるなら悔いはない・・・」
なるほどこういうことか!こういうことなのか!
実際はカインがアベルを殺したが、それを悔いて神は弟に反撃できるだけの知恵を与えたと。
・・・や、ちょっと待て。なんで私が謀反働く前提でミカエルのパワーバランス整えてんの?
怖い神のシナリオ怖い。
 
話が超脱線した。時間を戻すとしよう。

「全く、困ったやつだな。風邪を引くぞ。」

嬉しそうな声音になっているのも別に誰にも聞かれてないからいいとしようではないか。
さっそく彼の寝室から毛布を拝借して、ほんの一瞬だけ彼の匂いに幸せを感じながら執務室へと戻った。
イーノックはまだペンを握りしめたまま話さず熟睡している。船を漕いでがくんとなる訳でもなく、完璧に絶妙なバランスを保ったまま寝息をたてているのだ。
そっと毛布をかけてやろうとして、果たしてこの姿勢は「机でうたた寝」というものにふさわしいかどうかとポーズしながら悩んだ。机で寝るにしても基本スタイルがあるだろう、腕を枕にしながら突っ伏して寝るアレだ。
だがペンを引き離そうとしてもがっちり握りしめて話さない。
体格差のある上に基本サポート要因の私がイーノックと力比べをして勝てる筈がなかった。息を荒げ、ようやくあきらめる。ちょっとムキになったのは別に、そんなにもペンが大事なのかと思ったからな訳じゃない。
それならば仕方がない、姿勢さえ崩してやればペンを握っていようが問題なく寝れるだろう。

「くっ、あ・・・!う・・・!?」

・・・ペンの段階で気がつくべきだった。
動きやしない。
どんだけ強靭なんだイーノック、まるで彫刻だぞ。というかそんなに強張らせてたら全身が凝り固まってしまうんじゃないのか。
これ以上無理をするとイーノックを起こしてしまうかもしれないと思い、ため息をついて諦める。
ああ相当汗をかいてしまった。なにをこんなことで真剣になっているのか、もはや私にもわからない。ただ毛布をかけてやればいい話なのだろうが、どうにも気にいらない。
私の努力など意にも介さずすやすやと平和そうに上下している背に、軽く汗を拭った額を寄せた。
この広い背と適度な体温が、どうしようもない安堵を私に与えてくれるのはいつものこと。わかりきったこと。
ただし彼はそれを知らない。
君の背にどんなに焦がれ、縋り付いて振り向かせてしまいたいと思っていても、決してその時間を生きたものにすることは許されないのだから。

「いっそ誘惑してしまえればいいのだが」

簡単なことだ。
この身に無意識でも意識的でも宿ってしまう媚薬が如き淫靡な香りで、彼をも毒してしまえばいい。
どこまでも堕としてしまえばいい。そうすればそうするだけ、彼は私しか見なくなり、私の言うことしか聞かなくなるだろう。支配してしまえば、彼は思い通りの私の・・・その、恋び・・・パートナーになる・・・。
彼と一緒に堕天することが出来る。
神のシナリオの一部だとしても構わない、彼が前を歩いてくれるならば私は着いてゆく。

「どんな暗い世界の闇の中でさえ、きっと君は輝いて・・・」

あれどこかで聞いたフレーズだな。

「イーノック・・・」
「ルシフェル」

己の迷いの強さに思わずため息をついて呟いた名前への予想だにしない返答に、飛び上がって驚いた。
思わず羽が飛び出して、天井に頭をごんとやって涙目になる。
イイイイーノック!?おきおきおき、起きて・・・!!
天井近くの空中をふらふらとさ迷い、反応に困っていると、強く腕を捕まれた。
そのまま物凄いGで引っ張られる。見ずともわかる、イーノックが飛び上がって私の腕を掴んで引きずり下ろそうとしているのだ。
抗う理由なんてなかったが、いやある、あるぞ!こんな顔を見せる訳にはいかない!だから飛ぶんだ力の限り!イーノックの力で引っ張られても耐えろ勝て!勝て!!

「だ、大丈夫かルシフェル?」

負けました。
重すぎるよイーノック、もう息をしすぎて首の付け根がズキズキして目の前がぐらぐらする。
心なしか肺も痛い、そういえばサポートばっかりで実戦訓練とかしたことないもんな。最近携帯電話より重いもの持ったことないもんな。

「ルシフェル?ルシフェル!」

なんだ?イーノックの声が妙に遠いな、目の前も妙に白い、息をしてるんだかしてないんだかわからない。イーノックの服を掴もうと思ったが、手足が痺れていうことを効かなくなっていた。
ああ、これは過呼吸か。
落ち着いて対処すれば大丈夫だ、と心配そうに焦っているイーノックに目線で伝える。激しく呼吸を繰り返すせいで口も利けない。
ただの過呼吸だ、口を手で覆ってしばらくそのまま息をしていればいいのだが・・・

「あ、そうか過呼吸だ」

流石イーノック、これぞアイコンタクトというやつだな!
嬉しさを表現することは出来ないが、代わりに頷いてみせた。

「わかった、ちょっと我慢してろよ」

流石イーノック、すぐに対処法を見出したようだな!
そうそう鼻を手で覆って、軽く呼吸が出来る程度に口を塞いで、そのまましばらくしていれば落ち着いて・・・

「・・・・・・・」

・・・なんだかおかしくないか、これ?

「・・んくっ・・・?」

・・・なんだかおかしくないかこれ!?
対処は万全だよ!何も間違っちゃいないし、確かに医学書にもこれが一番リラックスできるとは書いてあるらしいが、いやこれだって、なあ?え、なんだろう、私が間違っているのか?
私の常識がおかしいのか?それとも頭がおかしいのか?

「・・・は、ふ・・・」
「落ち着いたな?」

ぇ・・・ええええ・・・?
なんだその、人助けをしましたよみたいなごくさわやかな表情は。
微塵もやらしいことしませんでしたよ的な純粋な笑顔は。
ということはだ、今のは彼にとってはまごうことなき治療の一貫であるのか?
目の前に過呼吸になっているひとがいれば誰にもするのか?
躊躇なく舌が入ってきて気持ちいいあまり堪能してしまったが、それすら治療の一貫なのか?
・・・泣きたくなってきた。
恥ずかしいし時間戻そう。そして正しい過呼吸の対処法を教えてやらねばならない。別に彼が誰とディープキスをかまそうが大いに関係あるし嫌だからという訳ではない。・・・訳ではない。

「すまない。」

半分やけくその毛羽立った心のままに指を鳴らしてやろうと思った瞬間に、そっとその手をとられて時間を戻せなくなってしまった。まあ手が離れた時にすれば・・・その前になんで手を握るんだろう。

「すっかり寝てたみたいだ。」
「昨日も根を詰めていたみたいだからな、下界であれだけ働いて更に寝る間を惜しんでデスクワークでは労働基準法にも引っかかるだろう。」

呼吸は収まったが、今度は心臓が過呼吸を起こしてまった。流石に心臓発作は口を塞がれても治らないし、そのまま死んでもいい。
近い近い近い!なんだイーノック、人に謝罪するときは誰にでもそんなに近くでものをしゃべるのか!手を握って!?ダメだもっとちゃんと常識を教えていかないと、他人には誤解されるし私の寿命が・・・

「ペンを握ってたら急な睡魔で、仕事をしてるつもりだったんだけど結局紙をダメにしてしまった。」

しょんぼりと俯きながら、壮大に失敗した大事な書類をちらりと見る。だが手は離さないし、距離も遠のかない。
ぐるぐると熱でかき回される中、ああそうかと気づく。

「ふふ、何をそんなに残念がる必要があるんだ、巻き戻してやればいい話だろう。」
「そうなんだけど。そうじゃない。」

え、違うのか。
お願いされているのだとばかり思っていたが。
 
「・・・どうせ戻してしまうんだろう?」

どうせもどしてしまうんだろう。
拗ねるような彼の声が耳元を掠め、私は、羞恥が全身を突き抜ける音を聞く。
羽の先まで真っ赤になるほどに。

「よく覚えてない。それが悔しい。」

何も言えず、目を見開いて空気を噛んでいる私になど構わずにイーノックがふてくされたように語り始めた。
ダメだイーノック、だめだ。気づいてはダメだ。
私を殺す気か!

「ずっと何回も愛している筈なのに、夢の中の出来事みたいに処理されてしまうのが、輪郭がぼやけて記憶の海に沈んでしまうのが、堪らなく悔しい。」

子供のような口調に騙されてはいけない、内容が!内容が爆弾じゃないか!!

「経験が残っても記憶が残ってなきゃそこに生きてるってことにならないんだな。」


・・・なあ、いつになったら俺はルシフェルの時間に生きる事を許される?


彼の呟いたトドメの一言を最後に、私の理性は弾け飛んだ。

そうだった。

指は鳴らすために作られた訳じゃない。
時間は戻すために作られた訳じゃない。

今は彼の背中と髪にしがみ付くためにある。
今はこの彼から与えてくれた奇跡のような時間を、ひとつ残らず記憶にとどめるためにある。








「ルシフェル、俺は」
「ひ、っぁ・・・・イーノック・・・」
「貴方とならどこへだって堕ちてやる」
「ぁっ、う、ああっ・・・!」 








でも、戻さなければいけないんだよイーノック。
こうして何度、君が私の想いに答えてくれようとも。
どうしてだろうな?
こんなに自分でも泣いて泣いて戻したくないと叫んでしまっているのに、戻してしまうんだ。

その理由はとっくに知っている気がする。 









「・・・・ん」
「やっと起きたかイーノック、机で寝るよりベットに行った方がいいぞ。」

何事もなかったかのように私が振る舞い、君はいつも少しだけ訝しげな表情を見せてから、ああなんだ夢だったのかと微笑んでみせる。
その記憶も、あと数秒もすれば記憶の海に沈み大したものではなくなるのだろう。

毎度この瞬間だけは、・・・どうしようもなく寂しかった。

「毛布かけてくれたのか、ありがとうルシフェル。」
「君が彫刻のように動かないからそのままかけるしかなかったよ。うたた寝の時くらいリラックスしたらどうなんだ。」

くすくすと笑えば、照れたような笑みが帰ってくる。
そうだ、イーノック。君は光なんだ。
太陽なんだ、しかし孤独ではなく万事の全てを受け入れるカリスマ的太陽なんだ。
誰のものでもない、まして私のものであってはいけない。
汚されてはいけない、闇になんか染まってはいけない。

「あれ、俺、なんで泣いてたんだ?」

どきりとした。
泣いていたのは私の方だ、何故君が泣く。

「なんか悲しい夢を見てたような気がするんだけど」

嘘だ、わかっているよ。
辛辣で残酷で死にそうなほどに、私はわかっている。
許してくれ。
私は、闇を跳ね除け浄化する、綺麗なままの君が好きだ。
天使でも人間でもいい、輝き真っ直ぐなままの君が好きなんだ。
まして私のせいで失いたくなどないんだ。

「なんだろう、悔しい。」
「変なことをいう奴だな、たかが夢なのだから忘れてしまえばいいだろう?」
「でも凄く強い想いがあって、絶対に忘れないって誓った筈なのに。忘れてる自分が、死ぬほど憎らしい。」

彼はそのまま一時間ほど、ぼろぼろと涙を零し続けた。
だめか、もう一度、戻さなくてはだめなのか。
私が毎回この身を焦がしてしまうのは、何度も手に入りながら、何度も手放して、私のものになどなった「生きた時間」はないというのに。
君を取り巻く全てに嫉妬してしまうからだ。
君のものでありたいと、切にこの身が叫ぶからだ。

「ルシフェル、愛してる」
「イーノック、私もだよ」

羽がまた一枚、墨が落ちたかのようにじわりと黒ずんでゆく。
堕天の時はもうすぐだ。
彼の時間を汚しきってしまう前に、絶対正義の名目の、躊躇なき粛清をくれミカエル。
そして私の大切なこの人を、どうか同じその顔で浄化してやってくれ。


本気でそう願いながら、心の隅で自嘲する。
なんて残酷な提案だろう。
なんて身勝手な願いだろう。
だがもう戻れはしない、それしか道はなく。進むか戻るかしか選択肢がないのなら、進むことしか私は選ばない。

いずれ訪れる私の未来にはお誂え向きの感傷だ。
残酷なエゴを成し遂げるしかないものを、人は悪魔と呼ぶのだから。




 

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E×L Shaddai 01 【イールシ創世記長編SS】

タイトルが決まったので変更&続き解除(わかりにくいので)しましたw
なんだか壮大な話になってしまう予定(笑)

※公式発表前の四大天使捏造酷過ぎ注意。
※ナワの勝手なイメージ満載注意。
※ルシフェル追放後、イーノックがメタトロンの地位に着いて間もない話という勝手な設定注意。
※ミカエルとガブリエルがイーノック争奪のライバルになってるとか勝手な設定注意。
※ミカエルが生真面目(現在壊れ気味)、ガブリエルが聖母に程近いお姉様タイプ(現在壊れ気味)、ウリエルが唯一の常識人、ラファエルが不憫とか勝手な設定注意。
※とりあえずイールシ前提、ミカ(攻)→イー、ガブ(攻)→イー。ウリエルとラファエルはまだやましくないです(笑)











E×LShaddai
-The End of Enoch and Lucifer.-

【Delusion 01】












最近の事。
ウリエルの頭痛は留まるところを知らなかった。

「メタトロン様、このミカエルが目的地までの送迎と宿泊ホテルの手配とお疲れ後のマッサージを担当いたしまッ!」
「あらあら大変、ミカエルが永遠の幽閉の牢獄に落ちちゃったわ~。」
「仮にも天使長にぃぃ!!」
「メタトロン様、御身を危険に晒す必要はありません。信頼出来る側近は一人で充分。お食事の世話から下の世話まで全てこのガブリエルにお任せ下さいませ。」
「ガブリエル!都合の良い事を言って抜け駆けは許さん!つか今本気で私の事消そうとしたろ!」
「ウリエルちょっと地獄の門の閂抜いてミカエルもついでに投げつけてくれないかしら?」

理由は明白、且つ最悪。
どんな罰を当てようにも追いつかないという程の熾烈な争いが昼夜問わず繰り広げられているからに他ならない。
目の前。身内同士。しかも天使。それも大天使、仮にもも何も本当に天使長であるミカエルと、清楚で百合の花をモチーフにされるほど汚れなき天使とされるガブリエルが。
ちなみに今しがた自分に地獄(冥府)の門のカンヌキを抜いて来いと言ったのはガブリエルその人である。
世界の終末迎える前に色んなもんが終わっとるわ。

「ウリエル、ガブリエル灰にできないか?天使長権限で。」

ため息をつきかけたところでガブリエルに負けそうなミカエルがそっと耳打ちしてきた。
ああこいつもこいつで手遅れだ。そもそも神秘の存在がそんな生々しいセリフを吐いていいのか。
ミカエルは長く美しい金髪を靡かせた逞しい体格の男で、どちらかと言えばメタトロンよりもがっしりと筋肉のついた所謂ガチムチだ。
しかしそんなガチムチに似合わない端正で物静かで美しい面構えが、彼のバランスに波風を立てている。
一回転半ほど悩んで、実はこれ逆にアリなんじゃね?と全てを肯定される、そんな完璧な勝ち犬的イケメンであると言えるだろう。
自分でも訳がわからない。
身体はしなやかな筋肉質で逞しく、しかし顔は色気のある耽美系と言えば…ダメだな余計に訳がわからない。
そう考えると彼の兄の方が余程バランスのとれた耽美系マスターだった。
ファッションで言うところの、ミカエルは筋肉というレイヤーを重ねすぎたブルジョア。重ねているものは一級品だが。

「ミカエルの魂を末梢するにはどうしたらいいかしらね、やっぱり適当に堕天させて浄化するのが得策?」

さて、そうこう考えている内にガブリエルもミカエルに対抗してか一言耳打ち…して来ない。ちょっと離れた場所から小首を傾げ、普通の音量で話しかけて来る。
なんて露骨なんだ。火に油を注ぐとはこのことだが、注ぐまでもなくガブリエル自身が油なのだろうか。
水と油は交わらないとはよく言うが、火で熱せられた油に水を注ぐと地獄の業火になるのは周知の事。つまり炎上させる為に利用するならばこんなに便利なものはない。
わかっていて敢えてやる、それがガブリエルという天使である。
絹のように長く艶やかな美しい髪を流し、清楚で美しい身体付きは聖母マリア様に劣らない程の魅力を持ってして、人々を慈愛の道へと導く。
穏やかで優しい顔立ち、物腰の柔らかで歌に似た清らかな声音は、まさに人格者の理想であり鏡である。
なにもその肩書きが嘘という訳ではない。事実彼女は本当に誰もが見本とすべき人格者であって、優しき愛の権化なのだ。
…今現在この場所を除いては。

「おい聞こえてるぞガブリエル。」
「盗み聞きは天使のすることじゃないですよ。」
「暗殺計画も天使のすることじゃないですよ。」
「お前らどっちも天使じゃないですよ。」
「やはりおかしいと思っておりました、よりによってこの人が天使長だなんて…」
「お前もだお前も!」
「あらうっかり、ウリエルの事かと思っておりましたのに。」
「お前らどっちもって言ってたのに!?」
「どれだけ遠いんだ耳が」
「そうですね、貴方とメタトロン様の距離よりは近いですね。」
「そんなに遠くないわ!いやいやむしろ0距離だろ、今は俺が常時密着サポート役を仰せつかってるんだからな。」
「うわあ…ストーカー通報しますよ。」
「そ、そこまで密着はしてない!流石に風呂とか自室にいられる時はそっと隣の壁から物音を窺っているだけだ。」
「では私の勝ちですね。」
「お前ら何してんだ!!」
「それにしてもミカエル、ウリエル、そして私(不本意)が天使でないとすると、アークエンジェルスがダークエンジェルスになってしまいます、大丈夫ですか?」
「天使じゃないのにエンジェルなのか?」
「エンジェルじゃないならなにになるのですか?」
「そうだな、天使の反対ってなんだっけ?天…は地だから、使うの反対は使わないだから…」
「もう駄目だ…。」

いい加減二人の行動の牽制も疲れて来た。
しかし結論が早い。自分(ウリエル)がいつの間にか天使じゃない事になっているのもどういうことだと声を大にして突っ込んでやりたいが、それ以前に忘れているものがないか。
アークエンジェル(大天使)といえば有名なのがもう一人いるだろうと気付かれた方もいるかもしれない。
正直気を抜くと忘れてしまうほど、なんていうか彼は、その、アレだ…。

「ねえウリエル、もしかして私の存在忘れかけられてない?」

ああ当人が出て来てしまった。
こういう時にしか働かない勘の鋭さ(身の危険の察知ともいう)で、ひょっこり会話に入り込んで来たのは皆さんご存じラファエル。

「あらラファエルおはよう。」
「庭の金木犀お前が植えたんだってな朝から癒されたぞ。ところでどこに行ってたんだ?」
「最初からいましたよ。」

普通に毒気のない二人に頭を撫でられている彼の姿に思わず涙腺が緩みそうになるのもいつもの事だ。
彼のおかげで頭痛も飛んだが、いつもいつも心に引っかき傷を作られる。
頭を撫でられると言っても、別に彼の外見が子供っぽいという訳ではない。
筋肉の付き具合こそミカエルには劣るが、あんなボディビルダー並みのダイヤモンド筋肉は常人レベルを超越しているので大した問題ではないし、別に筋肉がない訳ではない。
表現としては細マッチョくらいのものだろうか、しなやかな筋肉に笑顔を浮かべた好青年の顔が乗っているのであればバランスも文句を言わない。
物腰の柔らかい部分に女性らしさを感じる奴ではあるが、いわば誰とも垣根を作らず親しめる優しい教師みたいな存在に近いのかもしれない。
俺たちよりも遥かに天使という表現が似合う天使だ。うん、たぶん四大天使の中で誰より一番天使だ。

ラファエルの発言に、いささかびっくりしたような表情を見せた二人はとても天使ではない。
知っててやってるだろう、というか面白がってる事は明らか。

「元気出してラファエル、一時は四大天使の地位も危うかった知名度なんて気にすることないわよ。」
「多少私達より存在が薄くて影薄くて癒しの天使なのにガブリエルの方に治癒能力付加されがちなところとかな。だがそこがお前のいいところだ。」

ついでにミルトンの失楽園にも愛想の良い大天使としか書かれてない特徴のない青年のイメージだと俺まで思ってしまってる。

「何これいじめ?四大天使にヒエラルキーあるとか聞いてないよ。」
「はっは、天使だろうが聖人だろうが二次創作においては何でもありだぞラフィ。」
「そうね、血の繋がった実の兄を躊躇なく島流しにしてその地位をまんまと頂いたどこぞの鬼畜外道とか、受胎告知で有名な私とか、破壊天使ウリエルに比べたらただの癒し系美青年になっちゃうのは仕方ないわよラフィ。」
「受胎告知で有名な天使様だけが終末迎える専用のラッパどこ置いた?」
「落ち着け。」

いつからこんな事になったのか。
念のためにフォローしておくが、多少はその傾向があったにせよ、以前の俺らの仲はこんなに極端化していなかった。
というか、そもそもこんなにきついキャラクターを持ってはいなかった。
個性とかアイデンティティとかいうやつだろうか、自由意思により生まれる個体差のようなものだが、それがこんなに際立っていなかったという事である。
俺にだって訳がわからない。
いつから、どうしてこんな風に皆変わってしまったんだ?
確かにミカエルは初めから猪突猛進なところはあったが、基本的に口少なで生真面目な性格の奴だった。何より下ネタやら色恋沙汰を本気で軽蔑しているような潔癖症で、正義感の強い奴だったんだが。
ガブリエルに至ってもそうだ、先で述べた通り彼女は本当に素晴らしい人格者であり、聖母であり清楚で心優しい百合の花に相応しい清純な天使だったのだ。色恋には興味もあったかもしれないが、どちらかと言えば微笑ましく見守っているようなそんな慈愛に満ちた奴で。
いや、ラファエルだけは別段変わった様子もない。そのせいかより影が薄くなったくらいで。
俺自身はどうかと言えば、二人に引きずられるまま保護者として怒りと呆れを持て余す毎日になってしまっている。元々怒りの天使に近いイメージはあったらしいが、こんなに言葉多いのは自分自身でもあり得ない。一日何も話さない事すらあったというのに。

現実逃避にここまで考えてからふと気がつく。
変わったのは何も全員ではない、ミカエルとガブリエルしか変わっていないではないか。
二人の変化があまりに強烈だったから皆の全てに影響が出て来てしまっているが、原因はこの二人だけなのか。
だとすれば激変の理由を知るには、この二人に共通しているものを探れば良い。
粛清は根こそぎ。破壊天使のポリシーだ。

「ちょっと来い」

既に不毛な言い争いに戻った二人のとばっちりで泣かされかけている好青年の肩を叩き、廊下に連れ出す。
見た目はまるで捕食者と小動物のそれだが、あの二人が心底おかしくなってから私達の距離は逆に縮まった。
信頼度が高まったというか、いや断じて同情じゃなくてだな。

去り際に視界の端でチラリした我が天使の王、メタトロン様――元の名をイーノック――は、二人の騒がしいにも程がある流血沙汰の討論の最中で、微動だにせずただ黙々と契約書にサインをし続けていた。

それは、今回のグリゴリ達の浄化という大仕事を成し遂げる前・・・まだ書記長の彼と、共にあった光景と同じであった。





「どうしたんだい」

ようやく一息つける、そんな気持ちで深呼吸をする。
思ったよりも疲労していたらしい神経が、緊張感から解放された事で余計な脱力感を連れてきてくれる。
まだ仕事があるというのに、ここで根を上げていては一日持たない。

「面倒くさいから実直に行くが、ミカエルとガブリエルは何故あそこまでメタトロン様に執着しているんだと思う。」
「そりゃ恋しちゃったからじゃないの?」

事も無げにあっさりと結論付けたラファエルにイラッと来た。

「欲しいのはそんな軽薄で俗物的な匂いのする表面上のものじゃない」
「怖い怖い、わかったからウリエル落ち着いて!」

思わず腰の鞘から剣を抜き、途端に燻り燃え上がるものをラファエルの前に突き出すと、彼は全力で距離をとった。
予想以上に自分のイライラが頂天に達しているのに気がついたのだろう。というよりも、それが取り繕った返答であると彼自身理解していたという事にまた苛つく、不毛だ。

「えーと・・・じゃあ何から話せばいいの?」
「知っている事と、考えられる可能性と、そしてその対処をかいつまんで説明してくれ。」

ラファエルに聞くのには理由がある。
そしてラファエルにしか聞けない理由がある。

「難しい事言うね。」

眉を寄せて、困った表情をしたところで燃える刃が納められる訳ではない。
何者の穢れた知恵にも傷つけられない天使にとって、この剣は特別な存在だ。
自分だけが所有している訳ではないが、「裁く」事を役目として仰せつかっている自分のジャッジは天使とて例外ではない。
天使すら灰に出来る、これはそのような剣。
故にラファエルが心底怯えているのかと言ったらそうでもないのだろうが、間違って斬れたら危ないからしまってと言う彼の言葉に軽く頷いて、ようやく矛先を納めた。

「出始めは間違ってないよ、ミカエルとガブリエルの二人はメタトロン様へ恋慕の念を抱いてしまった。それは仕方のないことだった。」

外と繋がる廊下をゆっくりと歩き、静かな声で語り出す。
静寂の中に広がるラファエルの声は、まるで雨のようだった。





かつて神は、神に最も近しい存在を作った。
それは絶対的で、なにもかもが完璧、そして自由。
どんな恒星よりも光り輝くその羽と姿は、心地良い熱を孕み、目にした者すべてを魅了した。

彼らは対の存在として産まれ色や性質などは意識して違うものに造られた。しかしその、彫刻のように端正な顔立ちは同じものであった。
神は彼ら二人を深く賞賛し、褒め称え、惜しみない愛情を注ぐ。

「お前達は私の最初にして最高の天の子だ、そうだ天使と呼ぼう。」

光を反射し艶やかな影の落ちる黒い髪をした兄が尋ねる。

「貴方が世界の父ですか?」

光を飲み込み燦々と輝く金の髪をした弟が続けて尋ねた。

「ならば我らは世界ですか?」

愛おしく美しい二人の質問を受けた神は穏やかに微笑み、その額に祝福を授ける。

「お前達は世界だ。私の造る理想の世界。“明けの明星”」

黒の髪の子を抱き上げ、神は惜しむ事のない幸福の笑みを称えてみせる。
首筋に唇を寄せると、“ルシフェル”と呼ばれた子の身体はわずかに震え、その足が地を求めて揺れた。

「お前は誰より素晴らしい存在になる。私を愛し、弟を愛し、そして世界を愛しなさい。」
「・・・はい。」

静かに降ろされたルシフェルは安堵の表情を浮かべて己の身体を抱く仕草をする。
その様子を見ても神は怒る事も悲しむ事もなく、微笑みを崩すこともなかった。

「さあミカエル、お前も私を愛してくれるね?」

今だ下を向いているルシフェルを気にする様子もなく、ミカエルと名を与えた金の髪を抱き上げる。

「もちろんです、我が父、我が神、我が主」

ミカエルは太陽の如く明るい笑顔を弾けさせ、ルシフェルとは全く違った反応を返すのだった。
同じように祝福を受けても、心から幸せそうな表情を浮かべ、己から神に擦り寄ってゆく。
ルシフェルがその様子を少しだけ不思議そうな顔をして見つめている事も、当然神は知っていた。

「忘れてはいけないよ、君たちは自由の存在だ。自由に物事を見て、自分の力で己以外のものを愛してみなさい。私は・・・その可能性を信じている。」

その神の言葉に、ミカエルは期待され賛美されている事への充足感を、ルシフェルは言い知れない重みと恐ろしさから不安感を、それぞれ感じ取っていた。もちろんそんなものは表に出てきていいものではない、あくまで無意識下での事。
本人達ですら、一瞬で忘れてしまうような出来事だったのだから。






「可愛いからだと?」
「そう、本当のきっかけは一目惚れ。」

ウリエルの頭痛は今まさにフジヤマヴォルケイノの頂点であった。

「あの生真面目なミカエルがそう言ったのか?」
「あのね生真面目な優等生ほど一回転ぶと大変な事になるんだよ、年齢と重病になる確率は同じだし。」
「ミカエルの年齢っていくつだよ・・・」
「私達より遥かに長いのは確かだね。天地創造の一番最初に造られたんだから。」
「ガブリエルもそう言ってるのか」
「彼女は前々からそういう男児に慈愛が多く向く傾向があったじゃない」
「なんだそれ!」

ルシフェルの話を軽くまとめれば、ミカエルがメタトロン・・・いやイーノックに異常な愛情を持ち始めたのは彼が召し上げられてすぐの辺りだと言うのだ。
気付く訳がない。

「その頃はまだマトモだった。」
「そりゃそうだよ、彼だって常識はわきまえてる。」

曰く、初めは自らの気持ちに疑問を持ち、そして否定しようとしたらしい。
同姓という概念は天使にはないが、流石に天使と元人間では具合が悪いと思うのは生真面目な彼に充分有り得る事だ。

そろそろどこかの部屋に入って話そうと彼が言うので、自分の自室へと場所を移す事にする。

「しかも自分はセラフィム、いわば神の次の地位に値する天使だ。それが召し上げられて間もないイーノックに恋だなんて、当時の彼のプライドは悲鳴を上げていたと思うよ。」

しかしそれほどにイーノックの魅力には隠せぬ何かが溢れていたという訳なのか。
確かにあの男に俺だって惹かれたのは事実だ。だからこそ右も左もわからない彼の手を引いて、積極的に色々なことを教え込んだのであって、ミカエルの気持ちが全てわからない訳ではない。

「問題は、なんで、それが可愛いとかなんとか、そういう気持ちに昇華されるのかって話だよ!」

声を気にする必要はなくなったが、その分音量はそこそこのものになっているだろう。
勝手にお茶を煎れながら耳を塞ぐラファエルに、角砂糖をひとつぶつける。

「だって可愛いって思っちゃったんだからしょうがないじゃないか。」
「ミカエルがイーノック以上のガチムチだからか?確かにミカエルからすりゃ可愛く見えるかもしれないがな。なにそれ真面目に言ってんの?」
「大真面目でしたよ、少なくとも私のところに相談に来た時はね。」

何故ラファエルにしか聞けないことなのかと言うと、彼はいわゆる天使専用のメンタルケアセラピストという役目を担っているからなのだ。
もちろん彼の職務に初めから付属されていた訳ではなく、気がついたらそういうことになっていたというなんともまあ彼らしい流れなのだが。わかりやすく言えば駆け込み寺みたいなもので、心になにか鬱積している天使が彼の元で悩みをぶちまけ、すっきりして帰る・・・そんなところなのである。
しかしながら、それは天使一聞き役の上手なラファエルにしか勤まらない役目である事は確か。
いつしか神も彼の役職に「天使の癒し処」を追加していたというオチで・・・いやそんな話はいい。
中には当然話したくらいで解決出来ないものもある。その一つがミカエルの恋煩いであった。

「ラファエル聞いてくれ、私は頭がどうにかしてしまったらしい。神以外の者を愛するなど・・・いや、愛する者の中で特別な存在を作ってしまうなど・・・ってね。もう最初から頭抱えて死にそうにしてたよ、表には出さないから相談されるまで私も気付かなかったくらいだし。」
「それがなんで今あんな壊れたことになってんだ。」
「それは・・・ねえ、まあ順を追って。ちゃんと理由があると私は思ってる。」
「結論から話せ、今話せ。」
「空気読んでよ。」
「灰にするぞ?」
「ええと・・・それでミカエルは長く長く悩んで来た訳だね、でもある日転機がやってくる。」
「イーノックのグリゴリ浄化か。」
「そう、でもその最中だって彼は理性を保てていたし、想いを曝け出そうなんて気持ちも毛頭なかった。」
「じゃあなんだ、いきなり決壊したってのか?」

確かにイーノックに協力している時の彼は、多少興奮気味であったがどこもおかしくはない。
変化したと感じたのはいつだっただろうか。

「・・・好い加減、見ないふりをするのは止めようよ。なかった事にするにはあまりにも大きすぎる喪失だったじゃないか・・・」

俯いた彼の髪が鎖骨に沿って緩やかに滑り落ち、伏せた長い睫毛が白い肌にほの暗い影を作る。
知らずに息を飲み込んでいた。

「ミカエルにもガブリエルにも越えられない“壁”があったんだ。決して意識的にではなく・・・彼らはそれを排除した。」

目が合った。何を責めるでもない悲しげな瞳が、しかし針のように俺の眼球を貫く。

「堕ちて尚、イーノックを捕らえて離さぬ“明けの明星”を。」












※後書きへつづく。

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プロフィール

HN:
かさうさぎ
性別:
女性
職業:
貧弱一般人
趣味:
ワクワクすること
自己紹介:
エルシャダイに腐っている腐女子です。
エルシャダイ以前から腐っている腐女子に隙はなかった。
個人的にルシに燃え滾ってますが旦那はイーノック限定で。ナンナは二人の子供で大丈夫(確定)

生きる糧を見出す日々です。頑張ってエルシャダイ!発売日までこの熱を裏切らないで!
ヒロインはルシフェル党に投票しました。

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